巻ノ百四十五 落ちた先でその七
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「ですから」
「そうですな、では今は肥後の酒でも飲まれて」
「そうしてですな」
「休まれて下され」
加藤はこう言ってだ、そのうえでだった。
幸村達は酒と馳走でもてなし秀頼は国松に会ってもらった、その国松を連れてここまで逃れてきた治房は主に畏まって言った。
「よくぞごご無事で」
「うむ、源次郎達に助けられてな」
「そうしてですな」
「ここまで至れた」
秀頼は己に畏まる治房に答えた。
「非常に有り難い、源次郎達には何と言っていいかわからぬ、そしてな」
「それがしにもですな」
「うむ」
その通りだと言うのだった。
「よく国松をここまで連れて来てくれた」
「若し木下殿、加藤殿のお力がなければ」
「それもか」
「出来ませんでした」
治房は秀頼に畏まったまま述べた。
「とても。ですが」
「それでもじゃな」
「はい、この様にしてです」
木下家、そして加藤家の助力があってというのだ。
「国松様を」
「うむ、国松よ」
秀頼は今度は我が子に声をかけた。
「また会えたな」
「はい、父上」
「そなたが助かったのは何故かわかるな」
「はい、主馬や他の者達がいたからこそです」
「そうじゃ、お主の力で助かったのではない」
秀頼は我が子に話した。
「主馬、木下家加藤家とな」
「多くの者達がいてくれたので」
「お主は助かった、このことを忘れるでないぞ」
「はい」
国松は確かな声で答えた。
「そのことは決して」
「ではな、そのうえでこれから生きるのじゃ」
「そうさせて頂きます」
「薩摩でな、では時が来ればな」
「その薩摩に入り」
「生きようぞ、一介の浪人としてな」
これまでのあらゆるものを消し去ってというのだった。
「よいな」
「わかり申した」
「では再会を祝して盃を交えよう」
こう言ってだ、秀頼は国松との再会を祝った。熊本城では密かに生きている者達の密かな宴が開かれた。
暫くして城に密かに長曾我部、そして明石が来た。それでだった。
秀頼は彼等とも会いそれが済んでから加藤に言った。
「ではじゃな」
「はい、既に島津殿から文が来ております」
加藤はあえて上座に座ってもらっている秀頼に答えた。
「そろそろ人を密かにですが」
「この肥後に寄越してくれるか」
「そうしてです」
「その者が来たならばじゃな」
「ご家臣の方々と共に」
「薩摩にじゃな」
「入られて下さい」
こう秀頼に言うのだった。
「そしてです」
「薩摩でな」
「生きられて下さい」
「わかった、これまでご苦労だった」
「父の願いでありました」
加藤清正、彼のというのだ。
「それが果たせてです」
「そなたも嬉しいか」
「まことに」
こう秀頼に話した。
「感無量です、
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