第二章
[8]前話
「そしてである」
「我々はかい」
「今必死に悩んでいる、それは」
「どんな生物でもかい」
「今我々が脅威に感じている人間もである」
かつて彼等を狩り彼等から見て圧倒的な数を持ち文明も高度なものになってきている彼等も然りというのだ。
「知能があるであるな」
「彼等を脅威に感じている我々にとって残念なことにね」
「ならばである」
「人間達も悩んでいるのかい」
「そうである、生物は知能があれば」
またこう言うテメガノだった。
「必ず悩むある」
「そして今我々は悩んでいるということか」
「そうである、そしてこの問題が解決しても」
それでもというのだ。
「やはりである」
「我々は悩むのだね」
「そうである、今の問題が解決しても」
「我々はまた悩むか」
「新たにそうなるである」
「いや、問題が起こるから悩む」
友人はここでこのことに気付いた。
「そうだね」
「それはその通りである」
テメガノもそのことはその通りだと答えた。
「問題があるから悩むである」
「問題がないと悩まないね」
「そうなるである」
「それじゃあ問題が起こらないと」
「それは有り得ないである」
テメガノの返事は冷静なものであった。
「問題は何時でも常に起こるものである」
「絶対にかい」
「そうである、例えば何を食べるか」
「そのことを考えてもかい」
「悩むであるな」
「言われてみれば」
その通りだった、この友人もそうしたことで悩んだことがあるので否定出来ず頷けることであった。
「そうしたことでもね」
「問題の大小の問題があるであるが」
「悩みは常にだね」
「起こるものである、悩んだことがない悩みがない生物なぞ」
知能があればというのだ。
「ないのである」
「そうしたものなんだね」
「だから我々もである」
「今の問題が解決しても」
「また悩みに直面しそれはである」
「常にだね」
「出て来るものである」
こう言うのだった、そしてだった。
テメガノ達の種族は自分達が今いる山奥から宇宙の他の星に移住して人間達を避けることにした、それで全員宇宙船に乗り込んだが。
宇宙船に乗ってからだ、テメガノはまた友人に話した。
「どの星に行くか、宇宙で何もないか」
「そのことにだね」
「我々は悩んでいくである」
そうなるというのだ、そして実際にだった。
彼等は太陽系を出て遠く離れた星に移住することになるがその星を探すまでも宇宙航行の安全についても悩み続けた、星に移住してもその星での生活で悩み続けた。テメガノの言う通り悩みは永遠に存在するものだった。知能があるが故に。
哲学者は静かに思索する 完
2018・7・20
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