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Re:ゼロから始める士郎の生活
七話 渦巻く心と螺旋の輪廻
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爺様は腰に携えていた剣を抜き放ち、アラヤを断ち切ろうとした。
「────お爺様!」
その剣は止まらない。
殺気が込められた一撃は勢いが弱まる事はなく、アラヤの顔面を切り裂いた。
「アラヤ!」
避けられた筈の一撃をアラヤは避けなかった。
それどころか自ら当たるように動いていた。
「────────────────」
お爺様は冷静さを取り戻したのか、目の前の惨劇を見て剣を落とした。
「落ち着きましたか?」
アラヤは笑顔でお爺様に言った。
「何故、避けなかった?」
「愚問ですね。逆に何故、避けると思ったのですか?」
ポタポタ…。
その傷は深く、痛みは計り知れない。それなのにアラヤは笑顔なのだ。
「ヴィルヘルムさん、貴方の悲しみは計り知れない。
だが、その悲しみは自分のものだけではない。ラインハルトも…私も同じ悲しみを背負っているんだ」
「…………」
「だから、ラインハルトに当たるのはやめてくれ。怒りをぶつけるのは私だけでいい」
深々と刻まれた斬撃。
それはアラヤの顔に二度と消える事のない傷跡を残した。
あの一件からアラヤは自身の顔を隠すように包帯で顔を覆った。
それ程、傷跡は深く残酷だった。
それ以降、アラヤは睡眠時以外は顔の包帯を外す事は無く、ずっと包帯を巻いたまま生活している。
一度、友人の治癒魔道士を紹介し。
アラヤの顔の傷跡を癒そうとした事もあったが…。
「いや、いい」
アラヤは丁重に断った。
「この傷は、私の罪の証だ。忘れてはならない、大切な思い出なんだ」
包帯で覆われ、アラヤの表情は分からない。
だが、自身の傷跡を悔いてはいない様子だった。
寧ろ…誇りさえ抱いているようにも見える。
ならこれ以上の事は何も言うまい。


お爺様は変わられた。
以前より優しくなられた。
丸くなられたと言うべきか、以前よりも親しみやすい雰囲気になっている。
とても、あの剣鬼と恐れられたヴィルヘルム・ヴァン・アストレアとは思えない。
っと、お爺様の部下であった老兵は言っていた。

そして、お祖母様か亡くなって半年が過ぎた頃。

アラヤは、お爺様にお祖母様の死因である白鯨について語った。
直接的な死因では無いが、お祖母様の死に深く関わっている。そして白鯨を倒せば…直接的な死因の要因に辿り着けるかも知れないと。
何故、このタイミングでアラヤはお爺様に話をしたのか…。
僕は問い詰めた。
「今なら話しても問題ないと判断した」
アラヤはそう言って去っていった。
そして再び────お爺様は剣鬼としての殺意を身に纏い立ち上がったのだ。
もしかしたら結果的には、これで良かったのかも知れない。
それからすぐに。お爺様は、アストレア家から出ていった。
そして白鯨を討ち取る為に、大陸各地を探索し
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