七話 渦巻く心と螺旋の輪廻
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常心を保て、僕は剣聖なんだ。
そうやって自分を偽り続け、今も生きている。
あれから様々な出来事の連続だった。
先代剣聖、お祖母様は亡くなり。
僕達、家族は崩壊した。
繋ぎ止めていた鎖は簡単に断ち切られたのだ。
お祖母様が亡くなってからエミヤは自身の名を『アラヤ』に改名した。
なんでもエミヤ…アラヤはお祖母様の最後に立ち会ったらしい。
お爺様はアラヤを問い詰めた。
問い詰めて。問い詰めて。問い詰めて。最後は泣いていた。
お爺様も解ってるんだ。アラヤを問い詰めた所でお祖母様は生き返られない。
でも、それでも…最愛の人を亡くしたのだ。お爺様の気持ちは痛いくらい分かる。
なのに、どうして…。
僕は────。僕は────────。
込み上げる悲しみと苦しみ。
泣きたい。泣いて心の中のぐちゃぐちゃを吐き出したい。
どうして、どうしてなんだ?
こんなにも泣きたくて苦しくて悲しいのに…なんで、僕は…。
「何故…何故なんだ…テレシア……」
お爺様は泣いている。心の底から愛していた最愛の人を亡くし泣いている。
なのに。なんで、どうして。
この時、気付いた。いや…薄々とは気付いていた違和感の正体を知った。
やっぱりそうだ。皆の言ってる通りなんだ。
僕に、個人の自我は必要ない。必要なのは『剣聖』としてのラインハルト・ヴァン・アストレアなんだ。皆の為だけに生きて皆の為だけに戦い、誰かの為にこの身を捧げる。
今もこうして大切な人を失った悲しみを感じても嘆く事も出来ない哀れな僕をお祖母様、貴女は許してくれますか?
「ラインハルト…お前は何も感じないのか?」
お爺様は、僕の顔を見て言った。
「何とも思わないのか?
何も感じないのか?
お前は…お前は!」
怒りに満ちたお爺様の声。
ひしひしと伝わってくる。
お爺様が、どれだけお祖母様の事を愛していたのか、どれだけお祖母様の事を想っていたのか…愛おしくて哀しくて…僕なんかよりもずっと人間らしくて。
「応えろ、ラインハルト!」
剣鬼 ヴィルヘルム・ヴァン・アストレアは立ち上がった。
悲しみと怒りを身に纏い震え上がった。
迸る程の殺気────殺意だ。
その殺気は孫である僕に向けられている。
「お爺様…僕は、」
息詰まった。それ以上の言葉は出なかった。
こんなにも悲しくて苦しいのに、僕は何も言えなかった。
「やめろ、ヴィルヘルムさん」
アラヤは静かにお爺様の前に立つ。
「貴方の気持ちは分かる。だが、孫であるラインハルトに己の痛みをぶつけてなんになる?」
「うるさい。黙れ、」
「今回の一件は…全て、私の責任だ。その怒りは矛先はラインハルトでは無く、私に向けろ」
「黙れ、と言っている!」
お
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