七話 渦巻く心と螺旋の輪廻
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でも思う。
「────────────────」
どんな手品を使ったのか、エミヤの右手には大きな弓が握られていた。
その大きさはエミヤの身長と同等…いや、それ以上の大きさを誇る弓だ。
あんな大きな弓を────いつの間に?
先程までエミヤの右手に握られていたのは巨大な大剣だった。それが急に弓に形を変える?いや、変えたのか?
どちらにせよ、エミヤは隻腕の騎士だ。
普通は二本の腕で振り回すのであろう大剣を片腕だけで振りますのは感服するが、弓は片腕だけでは使えない。これを好機と捉えた僕は、身を低くし一気に駆ける。
その時の僕の姿を見てエミヤは「流石は、剣聖の血を受け継ぐ者だ。その歳で、それ程の動き…正に天才と呼ぶべきか。あと数年で基本ステータスだけなら俺すら上回るだろう」と言っていた。
だが、それは数年後の話であり。
圧倒的経験値の差はそう簡単に埋まるものではない。
「────────!?」
勝った。そう確信した直後、僕の体は宙を舞っていた。
突然過ぎる状況の変化に僕は対応出来ず、なんとか受け身を取り着地した。そして、その着地の硬直をエミヤは逃さない。
「チェック、だ」
視線の先、エミヤは弓を構えていた。
有り得ない。エミヤは隻腕の騎士だ。弓を構える事なんて出来やしない。
「いつも言っているだろう。常識に囚われるな、と」
常識に囚われるな。確かに、エミヤの言う通りだが…どんな手品を使えば『左腕』を取り戻し、そうやって平然と弓矢を構えられるのか?
そんなの常識の範囲を逸脱している。
常識に囚われるな、というよりも非常識に囚われるな、だ。
「動きは悪くない。だが、まだまだ動作に無駄が多い。
状況を見極める能力も付きつつあるが、少しの変化に対応出来なければ戦場では真っ先に死ぬぞ?」
あくまでも左腕の件は、少しの変化にしたいのか…。
五歳の子供であった僕は、そんなの普通じゃないと愚痴をこぼした。
だが。剣聖の加護を継承してからの戦いでは、そんなデタラメな能力や魔法を扱う術者が少なからず存在する事を知り、エミヤの言っている事もあながち間違ってない事を知る。
例外は存在する。見た目からは考えれない能力を想定して戦え。
口煩く、何度もしつこくエミヤは言った。
あぁ、本当にその通りだ。
剣聖として戦に出向く時…僕は、戦いを早期に終わらせる事ばかり考えている。
どうすれば被害は減るのか。どうすれば死傷者は減るのか。どうすれば戦いは終わるのかと。
考えても考えても結論は出ないまま、戦いは終わりを迎え、戦場では夥しい程の亡骸で溢れ返っている。
最初は、戦場に漂う異臭と数え切れぬ骸を見て吐きかけた。
でも…なんとかそれを飲み込み、普段の表情を崩さぬように虚勢を張った。剣聖である僕が…弱音を吐けば戦場の士気は下がる。平
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