七話 渦巻く心と螺旋の輪廻
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の事件は起こったんだ。
それから…あの友人とはまともな会話していない。
なんとか一命を取り留めた後に、僕はお見舞いに行った。だけど…友達は、僕の顔を見て恐怖した。あの時の僕は、友達からすれば恐怖の対象でしかなく、話し掛けても目を逸らされ、道端ですれ違っても、まるで視界に映る背景と同化した障害物を避けるように去って行く。
それは、とても辛かった。
自分が傷付くより辛かった。
だから…あの頃から僕は勝負の勝ち負けに拘るのはやめた。
勝っても誰かを傷付け、負けても誰かを傷付ける僕に…存在価値なんてあるのだろうか?
あぁ、昔の僕の方がよっぽど人間らしい考えと思考をしている。
自分の存在意義を自問自答し、自分の存在する明確な答えを導き出そうとしていた。
そして…それから数ヶ月後に僕は今の僕になる要因────キッカケを手に入れてしまった。
そのキッカケを僕に与えてくれたのは『エミヤ』という男だった。
なんでも遥か遠くの大陸からやってきた異邦人で、初めて会った時は、その外見に違和感を覚えたものだ。
彼との出逢いは、お祖母様からの紹介だった。
かつていつかの戦場で知り合い、そして刃を交えた仲だとお祖母様は言っていた。
剣聖である、お祖母様と刃を交えた…?
幼かった僕でも分かる。この人はイカれていると。
そして、その時の戦いでエミヤは右腕を失い。お祖母様は手傷を負わされたそうだ。
お祖母様に傷を付けた剣士…?
大陸最強の騎士である剣聖に傷を負わせた剣士?
「ふん。アレはまぐれ、偶然に過ぎない」
苦笑しエミヤという男は言った。
「右腕を代償に与えられ痛手は過擦り傷。実力差は圧倒的で経験の差でも負けていた。
勝つ事は最初から不可能だと分かっていながらも諦めなかった男のささやかな抵抗だよ」
あの時の私はガキだった。
エミヤは最後にそう付け加え、右腕が有ったであろう空間に手をやる。
やはり…剣聖に、お祖母様に腕を切り落とされた事を後悔しているのだろうか?
「だが、今もこうして刃を交えた剣聖とこうやって面と向かって会話している。人生というものは解らないものだな…」
エミヤは左手で茶の注がれたティーカップを取り一口。
「やはり、ここのお茶は葉の味がする」
葉の味?
余りにも意味不明な発言だったのでオウム返しをしてしまった。
「いや、なに。私は見ての通り、遠い土地の人間でね。ここに来てかなりの時が経つが…何故か、お茶の味だけ馴染めないんだ。故郷の味は…なんだろうな。口で例えると難しいが、深みがあって口の中を洗い流してくれるような…」
お祖母様はクスクスと笑った。
するとエミヤは「ごほんっ」と態と咳をし。
「とまぁ、ここのお茶とは違う味なんだよ」
少し気恥ずかしそうにエミヤは言うとお祖母様は更に笑い始めた。
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