ソードアート・オンライン〜剣の世界〜
2章 生き様
20話 心中
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
そもそも、自分は生きていてはいけない存在なのだ。忘れかけていたことを思い出した。なぜなら、自分は“禁忌から生まれた”のだから。
そんな思考が、鉄の手すりを強く握らせる。ここから身を投げたら、どんなに楽なのだろう。
その時だった。一陣の風が吹き、リアの長い髪を揺らす。リアがふっと振り返ると同時に、身体を誰かに抱きすくめられた。
胸板の感触や、腕の回し方のそれらは、涙が出るほど懐かしく、大好きなもの。
そして、彼は耳元で漏らす。
「良かった…リア、ちゃんと生きてるんだな…?生きてるよな…?」
耳元で彼の安堵の言葉を聞きながらリアはつぶやいた。
「ツカサ君…」
そうつぶやくと、ツカサの回された腕の力が強くなる。リアも思わず抱きしめ返そうと腕を上げるが、すぐにそれは下げられた。
「来ちゃだめだよ、ツカサ君…」
自分の口から洩れた言葉は、今までにないほど弱弱しく、かすれていた。
「私は、ツカサ君を傷つけようとした…この世で一番…一番、大切な人なのに……」
涙で視界が滲む。
だが、ツカサから返ってきたのは、否定でも、肯定の言葉でもない、吐息が混じった笑いだった。
わけがわからないリアをよそに、そのままの体勢で、ツカサは低いトーンでリアに語り掛ける。
「なぁ、リア。…こんなこと言ったら、不謹慎だと思う。だけど、正直に思ったことだから…」
ツカサは一度そこで言葉を切り、そして
「俺は、リアが俺のために人を殺してくれた事が、ものすごく嬉しかった」
「っ…」
「ああ、俺はこんなに大切にされてるんだなって。別に今までだって分かってたけど、改めて、な」
嗚咽が漏れないように、リアはぎゅっと唇を噛み締めるのに必死だった。そんなリアのことをわかっているかのように、ツカサは畳みかけて言う。
「でもな、リア。リアが俺を大切に思っててくれるように、俺だってリアのことを大切に思ってる。もし俺がリアが剣に貫かれてるところなんて見たら、俺もそいつを必ず殺してる。」
「で、でも…っ」
リアは声が震えるのを必死に抑えながら言った。
「自分に課せられた任務を忘れて殺しまわるだなんて…」
「いや、あそこで殺しておいて俺は正解だったと思う。このまま生かしておいたら、倍の犠牲者が出ただろう」
「それに、私はツカサ君にも剣を向けた…!」
「結局、ちゃんと止まっただろう?俺は傷つかなかったし、今こうしてちゃんとここに立ってる。それで十分じゃないか?」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ