ep26 束の間の推理
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
たい誰なのか。
先ほど、王留美をもう少し問い詰めることもできた。だが、スメラギはあえてそれをしなかった。王留美が会話を終える直前、意外そうに目を大きくしたのを彼女は見逃さなかった。
「何か、事情があるのよね。きっと」
ソレスタルビーイングは、簡単な組織ではない。実働隊であるスメラギたちだけで成り立っているわけではないからだ。
イオリア・シュヘンベルグが200年もの年月をかけて準備した、紛争根絶のための計画。それを彼1人だけでなく、多くの科学者たちが携わったのと同じだ。組織とは、矢面に立つ人物たちだけを示すのではない。
その証拠に、セカンドチーム・トリニティがある。また、組織には『監視者』という存在があり、計画を見守る者たちがいることもスメラギは知っていた。
ーーだから、補給のエージェントは偽りの可能性もある。
ーー私には知る権利がないのか、知られてはならないのか……。
ーーそれとも、私だけじゃなくてトレミーのクルー全員が対象?
とはいえ、本物のエージェントである王留美の『口添え』がもらえる相手だ。危険な人物ではないのだろう。
「外に出てみたら……さすがに慌てるかしら」
令嬢をからかうわけではないが、スメラギは1人でフフッと微笑む。
それから、部屋を出た。
空気を読むというのは、人間関係でとても大事だ。だが、好奇心がそれに制限されるかどうかは、個人次第だ。
結果として、スメラギは好奇心に打ち勝てなかった。
だが、ちょうど通路の途中でメカニックマンのイアン・ヴァスティに出くわした。彼はスメラギの顔を見るとあからさまな動揺を顔に滲ませる。
「お、おお。スメラギさん。こんなところで何してんだい。機体の整備、いや補給なら今やってるぞ。問題ない!」
「私、まだ何も言ってませんけど……」
スメラギは苦笑しながら何十も歳上の整備士を見やる。今の彼の態度で、彼女の推察の1つが消えた。
ーートレミークルー全員が『補給のエージェント』から隔離されてるわけじゃないみたい。
イアンは『補給のエージェント』に心当たりがあるようだ。
ーー何だか面白くないの。
スメラギはそんなことを思いつつ、からかい混じりにイアンへ話を振る。
「ひょっとして、奥さん?」
「い、いや。リンダはきてないんだ。会う機会があったら呼ぶさ」
「今はダメなの?」
「ん?あ、あー。そんな顔せんでくれよ。いずれ、会う機会は設ける!だが、今はちょいとアレなんだ!」
イアンが額に玉粒の汗を浮かべているのを確認し、スメラギは一歩下がった。これ以上は悪いと判断したのだ。
「そうね。じゃあ、いつか会えることを期待し
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ