暁 〜小説投稿サイト〜
ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
生存戦 5
[6/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
、出血し、自身の命を削ることとなった。

「せっかく……、せっかくエリサレス教徒どもから逃れて来たってのに、良い隠れ家だと思ったの、に……」
「そう。それだよ、それ。おまえこのあたりの魔物じゃないだろう。いったいどこからなんのために来たんだ」
「あたしたちはミィミィル樹海に住んでいた――」

 ミィミィル樹海。それはヨクシャー地方よりも遥か遠く、レザリア王国の領土内にある広大な森林地帯。多くの魔獣の他、ゴブリンやオーク、リザードマンといった亜人(デミ・ヒューマン)や独自の文化を持つ蛮族たちが住む、闇の森だ。

「あたしたち、ね。仲間がいるのか。そいつもスキュラか」
「ああ、そうだよ。あたしの妹だ。妹が、妹がかならずあたしの仇をとってくれるから、覚悟しな……」

 秋芳の脳裏に多数の大蛇が這い回ったような地面の跡がよぎる。

「もうずっと、三〇〇年ほど平和に暮らしていたけど、いきなり神官どもがやってきたんだ」
「ああ、やつらの大好きな浄化政策ってやつか。魔物は存在自体が悪。問答無用で殺してしまえってやつか」
「いいや、やつらはあたしらを捕まえに来たんだ」
「エリサレス教徒が魔物を生け捕りに? なんのために?」
「兵隊に、するとか、言ってたね……。片っぱしから【カース】や【ギアス】をかけて支配していった……。はっ、人間どもの手駒にされるなん、て……、まっぴら、ごめん、だ、ね……」
「おい、ちょっと待て。まだ死ぬな、くわしく教えろ」
「…………」

 返事はない。ハウンヘッドスキュラはすでにこと切れていた。
 
「レザリア王国内でエリサレス教の神官が魔物を徴兵≠セと? 夷を以て夷を制すつもりか。それも極めて直接的な方法で」

 レザリア王国は様々な国や民族を神の名の下に併合し、巨大化していった歴史を持つ。その多種多様な人種を信仰によってかろうじてまとめ上げている、王国とは名ばかりの、事実上、聖エリサレス教会が支配する超巨大な宗教国家なのだ。
 遠征、出兵、侵略、侵攻、進出、征服――。常に対外戦争に明け暮れているのは、国内の余剰兵士を外に捨てる、一種の棄民政策だといわれている。
 支配下においた国の反乱因子を潰しつつ、レザリア憎しの感情を他国へ転嫁しているのだ。
 そんな国が神聖魔術をもちいて魔物を捕獲している。

「…………」

 後日。秋芳に不正はないか、行動履歴水晶(ジャーナルクリスタル)の記録を確認していたリック学院長をはじめとした講師達が表情をかたくする。

「これは、レザリア王国が魔物の軍を作るというのか!?」
「少数の魔物なら召喚魔術で制御できるが大量の魔物で軍隊を編制するなど至難の業だ。レザリアの魔導技術でそこまでできるとは考えにくい」
「だがやつらは現にこうして魔物狩りをし
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ