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ルヴァフォース・エトランゼ 魔術の国の異邦人
生存戦 5
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立派な人の紹介や知遇を得ることを『伯楽の一顧』というようになった。
 ジョン・ピアポント・モルガンという人がいる。アメリカの五大財閥であるモルガン財団の創始者である大富豪だ。
 うそかまことか、彼にこんな逸話がある。
 ある日、古い友人が金を借りに来たのだが、モルガンは断った。
「かわりに、君と一緒に路を渡ってやろう」
 ふたりはウォール街の道路を横切った。
 翌日、友人のもとにはたちまち金の貸し手が殺到したという。
 権力のある者と親しい。世間にそう思われただけで、友人の側にもなにがしかの力が備わる。権力とは、そういうものだろう。

 閑話休題。
 秋芳はルヴァフォース世界でナーブレス公爵家の令嬢ウェンディ、続いてセリカ=アルフォネアという邪神戦争の英雄にして第七階梯の魔術師と親交を持った。
 レニリア姫とも密かに交流がある。
 これは、まさに伯楽・モルガンの知己を得たに等しい。
 自身もまた悪魔殺し、シーホークの英雄、竜を駆る魔術師という威名を持つ。
 異郷の地で他者に軽んじられることなく、快適に過ごすに値する働きをしたと思っていた。
 余人にわずらわされることなく、魔導の道を歩めると思っていた。
 その矢先に決闘騒ぎである。
 予測とちがったのだ。
 噂や肩書きに関係なく突っかかってくる者たちが絶たない。
 シーホークを救った実績もセリカやウェンディの後ろ楯はあるが、どうもここ魔術学院内では存在を軽視されている。

「専守防衛を良しとする、世界で一番平和を愛し温厚な日本人であるこの俺があえて決闘を受け続けていたのは魔術の多様性を実践して示すことのほかに、己の力量を知らしめようとしていたのだ。だが、あまり効果はなく今回の生存戦となってしまった」
「……」
「奥ゆかしい日本人の気質は時として仇となる。俺のような控えめで他人を立てる謙虚な日本人の態度はこのさい捨て置いて、ヤンキー並に俺が俺がの精神でいこうと決めたのよ」
「……はあ、そうですか」
「異論があるか?」
「異論はねぇがスキュラの肉を美味しく食わせてくれる調理スキルとやらを披露してくれよ。じゃきゃおまえを讃える英雄叙事詩(サーガ)のケツに汚点がつくぜ」
「おう、それよ。たしかにさっきおまえさんが言ったように蛇は小骨が多い。だから羮に、スープにしようと思う」
「ほう!」
「臭みを消すため各種ハーブも採ってきた」
「作るのも食べるのも君たちふたりの勝手にしてくれ」
「食べたくなったら遠慮なく声をかけてくれ。あのサイズだからな、ふたりで食べるには多すぎる」



 ジャイルが片手半剣(バスタードソード)で蛇の首を斬り落とした。
 秋芳は切断面にダガーをあてて切り開き、内臓を掻き出し取り除いてゆく。そして切れ目のほうから皮を少しずつ剥い
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