生存戦 5
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四肢がでたらめに折れ曲がり、喉を噛み裂かれたふたりの姿を目の当たりにしたジャイルはふたりの平然とした姿に驚愕した。正直なところ助かるとは思っていなかったからだ。
「どうやらあれはスキュラの見せた幻だったらしい」
水に沈んだクライスもまた無事な姿でふたりの後から現れた。
「やられたよ。どうも僕らは最初からやつの、スキュラの【ファンタズマル・フォース】。あるいはそれに相当する精霊魔術を受けていたみたいだ」
【ファンタズマル・フォース】。対象の精神に働きかけ、幻影を見せる魔術。精神に直接働きかけているので、術を見破れない場合は偽物の炎でも実際に熱く感じる。
「それでやつの眠りの魔術で水に捕らわれた姿を無惨に殺されたように見させられた、らしい」
「ああ、僕らを介抱してくれたこの騎士爵様の言葉によるとね」
ハインケル、そして秋芳が姿を見せる。
「そうだ。スキュラは生きた人間の血肉を好む。大量に獲物を獲ってもすぐには殺さず魔術で仮死状態にして保存してちまりちまりと食いつなぐそうだ。ルネリリオ、ベニアーノ、クライス。最初に襲われたこの三人は残った連中からは酷い殺されかたをしたように見えたようだが、それは幻で実際は精霊魔術によって半永久的な眠りに落とされただけだったようだ」
「……それをあんたが救ったわけか、カモさんよ」
「そういうことになる。たが、スキュラを倒した手柄はおまえさんのものだ。たいした奮戦ぶりだったぞ、まるで巨大ワニと戦うドゥエイン・ジョンソンばりだった。不死身かよ! て思うくらいのタフさだった」
「そのたとえはわからねぇ」
「おまえさんの名前は、ジャイル=ウルファートで合っているよな?」
「ああ、それで合ってる。あんたが俺を、俺たちを手当てしてくれたみたいだな」
「うむ。恩を感じて降参してくれると助かる。なにせまだ生存戦は終わっていない、最後のひとりが残っているからな」
「それが俺ってわけか」
ジャイルは秋芳に顔を向けたまま周囲に視線を向ける。
「……僕たちは降参したよ」
「なにせあんなことがあったばかりだし、とてもじゃないけど続けようって気にならなくてね」
「介抱してくれた相手と戦えないよ」
ジャイルもまた彼らとおなじ心境だった。
「せっかくこんな丁寧な手当てをしてくれたんだ。また汚すのは気が引ける。俺はおりるぜ」
生徒たちの間に安堵の息が漏れた。ジャイルのことだ、意地をはって秋芳と一騎討ちでもしかねないと考えていたが、杞憂に終わった。
魔獣相手に命がけの戦いをした直後だ。もう戦闘になるのも見るのもごめんだったからだ。
こうして四日間におよんだ今回の生存戦は秋芳側の勝利という形で幕を下ろした。
「ところでむこうに転がっているスキュラの死
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