第一章
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学生小説家の名推理
その話を聞いてだ、的野智章はすぐに首を傾げさせた。そしてこう言った。
「奇怪な事件ですね」
「やっぱりそう思うね」
「はい、僕もその事件については前から聞いています」
「伊藤博文を殺したのは彼じゃない」
「彼が撃った弾丸とは別にです」
「そう、撃った数と伊藤博文を含め周りの人に当たった数が」
まさにとだ、智章の行きつけの喫茶店で彼と知り合いになったその客は彼がいつも座っているカウンターの席の隣に来て述べた。
「それがね」
「銃弾には先端に十字の傷も入れていましたね」
「ところがね」
「その弾丸もですね」
「数が合わないね」
「そうですね、それでですね」
智章はコーヒー、彼は小説ではあえて文学的に書く珈琲を飲みつつ述べた。これを飲むと頭が冴えて小説もよく書けるのだ。
「果たして彼が伊藤博文を暗殺したのか」
「巷に言われているね」
「そこが疑問視されていますね」
「どうなんだろうね、ここは」
「そこからさらに言われていますね」
智章は客に穏やかな顔で返した。
「他に実行犯がいた、そして黒幕がいた」
「持っていた銃が当時の共産主義者が使っていた拳銃だったこともあって」
「コミュニスト、レーニンが黒幕だった」
「そんな話もあるがどうなんだろう」
「はい、実はです」
ここで智章は客にあっさりとした調子で述べた。
「僕なりにもうです」
「この事件について推理しているのかな」
「そのつもりです、確かに当時のコミュニスト達は色々動いていました」
全ては共産主義革命の為だ、かつてソ連で国父と言われたレーニンもかつては言うならば国家転覆をテロによって行う危険人物だった。そして革命を起こして多くの者がその革命の中の粛清や飢餓で死んだ。
「ですが当時レーニンはスイスにいて」
「アジアの東の端で何をするか」
「欧州、そして最初の革命が起こったロシアならともかく」
そこまで離れていてはというのだ。
「余力があっても回すかどうか」
「そこまではないか」
「欧州で色々動いていました」
後にヒトラーがいたウィーンにスターリンもいて活動していたとのことだ、後に戦うことになる二人の独裁者達は若き日に音楽の都で擦れ違っていた可能性があるのだ。
「動くならロシアでしょう」
「ではか」
「はい、当時ロシアの勢力圏にあったとはいえハルビンで何かするか」
「それはないか」
「まず考えられません、これはです」
「コミュニストは黒幕じゃない」
「そうなるでしょう、そして」
智章はコーヒーを飲みつつさらに話した。
「だとすればです、やはりです」
「黒幕はコミュニストではなくて」
「銃も弾丸も普通に用意出来ます、そして彼がです」
暗殺したとい
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