第二章
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「困ったこともあるでござる」
「というと」
「食事でござる。拙者納豆も塩辛も梅干しも生ものも好きでござるが」
刺身等だ、日本人が好きなそれも好きだ。
しかしだ、刺身はよくてもというのだ。
「どうしても食べられないものがあるでござる」
「そうなの」
「そこだけが困っているでござる。絵も苦手でござるが」
そちらはというと。
「ドイツでも苦手だったから同じでござる」
「だから言わないのね」
「そうでござる。日本人は恐ろしいものを食べるでござる」
「その恐ろしいものが気になるわね」
どうにもとだ、部長はその食べものが気になった。だが聞こうとしたところで一年生に部室の掃除のことで聞かれた、それでそっちに気が向かったのでアデリナにさらに聞くことが出来なかった。そしてその夜に。
アデリナはホームステイ先の夕食の場でだ、おかずの刺身を見た。だが。
刺身の盛り合わせの中に烏賊のそれもあるのを見てだ、日本人の家族達に言った。
「申し訳ないでござるが」
「あっ、烏賊は」
「遠慮させてもらうでござる」
家の主婦に答えた、実に優しい人でアデリナにもよくしてくれる。
「こちらは」
「アデリナさん烏賊はね」
「どうしても食べられないでござる」
「お刺身はよくても」
「烏賊は駄目でござる」
「そうだったわね」
「だから他のものを頂くでござる」
「そういえばアデリナさんって」
家の娘も言ってきた、中学生でアデリナを慕っていて二人は実の姉妹の様に仲良くなっている。一緒にお風呂に入ったり寝ることもある。
「蛸も駄目よね」
「足が沢山あって柔らかくてうねうねと動くとでござる」
そうした生きものはというのだ。
「苦手でござる」
「そうなのね」
「日本人はどちらもよく食べるでござるな」
「うん、私もね」
黒髪と黒い目の典型的なアジア系の外見でだ、家の娘はアデリナに話した。
「どっちも好きよ」
「そうでござるな」
「特にたこ焼きがね」
「たこ焼き。絶対にでござる」
それこそと言うアデリナだった。
「食べられないでざる」
「美味しいのに」
「美味しいと聞いてもでござる」
アデリナにとってはだった。
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