永遠ならざる
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るだろうが、そもそも敵なのだからさしたる問題もない。
帝国侵攻作戦を防ぐのは難しい。
ならば、帝国侵攻作戦のダメージをある程度少なくする。
あるいは、今歴史を変えるか。
思考を深くして、アレスは眉根を寄せた。
二杯目の紅茶を飲み干せば、既に辺りは暗くなっており、周囲にいた人間も既にほとんどが退出していた。
閉館を告げる音楽が静かになり始めている。
五周目へと突入していたリピート再生を閉じて、アレスは端末の電源を切った。
紙コップをくしゃくしゃと丸めて、ごみ箱へと投げ入れる。
考えを続けたが、いまだに考えはまとまらない。
歴史をかえるとすれば、どのタイミングが最適か。
自分は本当に戦略家という思考は足りていないのだなと、アレスは苦笑する。
仮にヤン・ウェンリーがこれを知ればどう考えるだろうかと思った。
おそらくは最適なタイミングを教えてくれるのではないだろうか。
相談してみるかと、考える。
あくまでも想像であり、どのタイミングが良いだろうかと。
一番良い選択に思えた考えだが、ヤンの考えを奪う可能性が躊躇いを与える。
ヤンが不敗でいるのは、今までも、そしてこれからも自らが考えて、行動した結果だ。
そこで答えに近い未来を教えることで、彼の思考に多大な影響をもたらすことは必至。
妙な先入観を抱かれて、ただの凡人になられたら、同盟の根本が変わってしまう。
そうならない可能性の方が高いかもしれないが、わずかな行動で良くも悪くも変わるというのはワイドボーンで実感していた。実にくだらない理由であるが、稀代の英雄を変えてしまうということを恐れているのかもしれない。
あるいは、ヤンの性格のことだ。
レベロの失態がなければ、メルカッツに任せたとは言いつつも、一時期は悠々自適な引退生活を送ろうとした人物である。今後、多くのものが死ぬと聞けば、フェザーンの様に地方自治だけを残して平和に暮らそうというのではないか。
いや、それはないかとアレスはすぐに否定した。
まだ姿すら見ていない少年の未来のために戦うと言った言葉。
そう考えれば、結局のところは、いつ動くというのは些細なことかもしれなかった。
未来を知っていたとしても、完璧ではない自分にアレスは笑う。
結局のところ、知っていたとしても知らなかったとしても同じことなのかもしれない。
戦うべきは自分で、動くべきは自分で、それで勝つのも、負けるのも自分だ。
迷ったところで解決するわけではない。
ならば――戦うとしよう、永遠ならざる平和のために。
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