282部分:第二十話 準備の中でその十二
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第二十話 準備の中でその十二
「どうしようもない乱暴者で」
「何かあればすぐに暴れる」
「女の子にも襲い掛かる」
「とにかくとんでもない奴らしいから」
野上もここでまた話す。
「皆気をつけてね」
「ええ、それじゃあね」
「そいつが来たらね」
「警戒するわ」
三人もあらためて頷く。そんな話をしていた。
そしてである。いよいよ準備の時が来た。学校の何処もかしこもその準備にかかってだ。大忙しといった有様になっていた。
「おい、トンカチ何処だ?」
「ああ、こっちだ」
「衣装何処?」
「そっちに一杯あるわよ」
あちこちの教室でこんなやり取りが行われていた。そうしてそのうえで皆右に左に動き回って走り回っていたのである。
一年三組でもだ。椎名が見せの見取り図を手に皆に話していた。彼女はクラスの中央にいてそこから全体を見回しているのだ。
「ええと、大石と新井はそこね」
「ああ」
「トンカチ打ってるからよ」
「わかった」
二人の男子の言葉に頷く椎名だった。
「じゃあそこ御願い」
「ああ、わかった」
「それじゃあな」
「それで栗橋と羽田は」
今度は二人の女子だった。
「テーブルをね」
「こっちに置いていくわね」
「それでいいのよね」
「うん」
二人の言葉にこくりと頷く。
「そこで御願い」
「よし、じゃあね」
「ここに置いていってね」
二人は椎名の言葉に頷くそのテーブルを一旦教室の端に置いていく。そして椎名自身もかなり積極的に動き回っていたのだった。
ふと窓のところに行ってだ。椅子に乗って拭いたうえで飾りをつけていく。その動きが実に速い。
そのうえでだ。動きながらまた指示を出す。
「中村と礒部はそこでね」
「よし来た」
「それじゃあな」
「窓の飾りを御願い」
自分もそれをしながらの言葉である。
「それで赤瀬は」
「うん」
学級委員の赤瀬にも声をかける。彼はその大柄な身体と怪力を生かしてだ。それを有効に使って荷物を運んでいた。しかも動きが速い。
その彼に声をかけてであった。言うのだった。
「そのまま」
「そのまま?」
「そう、そのまま」
こう告げるのだった。
「荷物をどんどん運んでいって」
「それでいいんだ」
「何を何処に運ぶかはわかっているよね」
「勿論だよ」
それはその通りだと返す赤瀬だった。
「それじゃあこのままだね」
「そういうこと。それと」
「それと?」
「赤瀬はこれでいい」
彼はだというのだ。
椎名は赤瀬に話を終えるとだった。すぐに携帯を取り出した。そうしてそのうえでだ。ある人間に対して連絡を入れたのであった。
「狭山」
「おっ、椎名か」
狭山の声だった。彼の携帯に電話をかけたのである。
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