巻ノ百四十五 落ちた先でその三
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「余のせいでな」
「いえ、それはです」
「違うか」
「はい、右大臣様のせいではありませぬ」
彼のせいで腹を切らされたのではないというのだ。
「そうしたことはお考えにならぬ様」
「そう言ってくれるか」
「運命だったのです」
「叔父上のことは」
「はい、まことに残念ですが」
助けに高野山まで赴いた幸村にしてもだ。
「あの方のことは」
「運命だからか」
「右大臣様はお気に為されませぬ様、そして」
「その叔父上がか」
「それがしに言われたのです」
「余に何かあればな」
「助けて欲しいと。ですから」
「薩摩までか」
「お連れ致します」
幕府の者も入って来られぬこの国までというのだ。
「ですから」
「そうか、それではな」
「それがし薩摩まで必ずです」
「余をじゃな」
「お連れ致します」
何があろうともだ、幸村は約束した。そしてだった。
船は密かに肥後まで向かっていた、船は一路海を進んでそうしていた。船旅は途中大きなこともなく。
無事に肥後まで着いた、その肥後に着くとだった。
船に乗っている者達は秀頼一行に密かに囁いた。
「肥後に着きましたが」
「それでもです」
「油断は禁物です」
「ですから」
「変装をしてですな」
幸村が応えた。
「そうしてですな」
「はい、真田殿とご子息と家臣の方々は」
「そうして下され」
「そしてです」
「右大臣様は籠に入られて下さい」
見ればそれは港にもう用意されていた。
「それに入られてです」
「夜に密かにです」
「城に入りましょう」
「熊本のその城に」
「わかり申した」
幸村も応えてだった。
秀頼に籠に入ってもらい姿を隠してだった、そうして。
自分達は変装をした、大柄な清海や伊佐は目立ったがそれでもだった、誰も一行を見ても何も思わなかった。
それでだ、十勇士達は城に向かう途中の宿でこう話した。
「変装もしていてよかったですな」
「誰も我等が真田の者とは気付きませぬ」
「ではこのままですな」
「城に入り」
「そうしてですな」
「そのうえで」
「うむ、城に入ってじゃ」
そしてとだ、幸村は十勇士達に述べた。
「そうしてじゃ」
「はい、それからですな」
「落ち着いてからですな」
「加藤殿とお話をして薩摩に入り」
「そのうえで」
「右大臣様に落ち着いて頂く、そうなれば安心じゃ」
秀頼のことはというのだ。
「まずはな」
「左様ですな」
「薩摩まで入ればです」
「右大臣様のことは安心ですな」
「もう幕府の目も届きませぬ」
「そうじゃ、だからじゃ」
それでというのだ。
「薩摩に入るまでは気を抜かぬ様にな」
「ですな、しかしです」
ここで海野がこんなことを言った。
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