第三章
[8]前話
「その子は御前の本当の友達だったのかもな」
「本当の?」
「前言ったな、自分が友達と思っていてもな」
「相手が友達と思っていない場合もあるんだね」
「ああ、けれどな」
「けれど?」
「友達と思っていない子が死んで残念に思うか」
こう小太郎に問うのだった。
「それはどうだ」
「そう言われると」
「思わないな」
「うん、友達と思っていない子がどうなっても」
「もっと言えば縁も何もない子がな」
「死んでもね。何も知らなくて関係ない子なら」
それならとだ、小太郎も答えた。
「思わないよ、何も」
「残念ともな」
「そうだよね」
「友達だからな。死んだらな」
それならばというのだ。
「残念に思うんだ」
「そうなんだね」
「ああ、だからな」
「その子は僕の友達なんだ」
「それで死んだ子もな」
この場合は後輩の子だ。
「その時にわかるんだ」
「死んだ時に」
「そうじゃないか?例えば御前が残念がっているのを見てな」
後輩の子を中心に置いてだ、父は息子に話した。
「御前が友達だってわかるのかもな、死んでから魂だけになった時にそれを見てな」
「つまりそれは」
「そうだ、友達ってのはお互いが生きている時にわかるものじゃないんじゃないか?」
「どちらかの子が死んだ時にわかるのね」
母も言ってきた。
「要するに」
「そうじゃないか?」
父は母にも言った。
「やっぱり」
「そうなの」
「いや、そこは俺もまだわからないけれどな」
「友達はそうしたものなの」
「実際何でもない奴がどうなっても何も思わないだろ」
「それもそうね」
母も頷いていた、そんな二人の会話を聞いてだった。
小太郎はより友達について考える様になった、そうしてそのうえでだった。
友達作りに励んでいった、多くの子と話をして付き合い遊ぶ様になった。それから彼は生きている間に多くの人と交流してだった、多くの別れも経験した。その都度残念に思うことが多かった。そしてその相手が友達だったとわかったのだった。小太郎は生涯に多くの友達を持った。そのことは彼が死ぬ時に実感出来てそのことは幸せだと思った。
友達が欲しい 完
2018・7・16
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