277部分:第二十話 準備の中でその七
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第二十話 準備の中でその七
「月が夜にあるから昼にいられるんだよな」
「月が夜にですか」
「昼にだっていたりするけれどそれだって」
「それもですか」
「うん。太陽は月に傍にいて欲しいんだよ」
それで月は昼も空にいるのだというのだ。
「それに月に光を与えるのも」
「それは?」
「月に光を与えたくて仕方ないんだと思うよ」
「それで月が輝くんですね」
「太陽は月が好きなんだ」
陽太郎は話した。
「それに月もさ」
「月もですか」
「太陽が好きだからその光を受けるんだよ」
「太陽が好きだから。それでなのですか」
「嫌いなら受けなくていいじゃないか」
「そういえばそうですよね」
月美も彼のその言葉に頷く。
「言われてみれば」
「だからだよ。それでなんだよ」
ここで結論を述べる。
「太陽と月は空にあるんだよ」
「そういうことですか」
「そう思ったんだ、今」
陽太郎は笑みはそのままだった。
「空を見てさ」
「それなら私達もですね」
「そういう感じになれたらいいよな」
「はい、本当に」
「それじゃあ文化祭お互いに頑張って」
文化祭のその話もした。
「そしてその最後に」
「フォークダンスを」
「そうしよう」
「はい、そうしましょう」
二人で言い合った。
「そうして二人で」
「ずっと二人でな」
「実は」
月美はここまで話してから一呼吸置いた。それからだった。
「私、実はですね」
「実は?」
「こういうこと言うのはじめてなんです」
月明かりにその赤らんだ顔が見えた。
「陽太郎君に対して。誰に対しても」
「俺もだよ」
「陽太郎君もですか」
「俺もはじめてだから」
照れ臭そうに笑っての言葉である。
「それはさ」
「そうですか。じゃあお互いに」
「一緒だよな」
陽太郎はまた月美に話した。
「そう思うといいよな」
「はい、本当に」
そんな話をしながら太陽に照らされて白く輝いている月を見上げていた。そこには月はあった。だが星は何処にもない夜だった。
星華は日が近付くにつれだ。難しい顔になってきていた。そしてである。
教室で三人に対して声をかけた。
「ねえ」
「ねえ?」
「ねえって?」
「どうしたの?」
「文化祭の最後だけれど」
その難しい顔に不安なものも入っていた。
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