暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
Alicization
〜終わりと始まりの前奏〜
神立
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「実際、それはこの上なく有効だったの。軍事においての最善は、そもそもゲームをさせないこと。取引も交渉も駆け引きも、させる暇なく最初の一手で詰ませるのが一番。そーいう意味では、今回のヤツの行動は誰よりも先手を取っていた」

思わずキャーリサを睨むが、本人はどこ吹く風とチラッと舌を出す程度だ。三姉妹の中でも《軍事》に秀でた彼女の言葉は確かに理があるが、どうにも納得できない。

「事実、黄金の卵を産むガチョウに頼りきっていた先進各国の内部はもーズタボロ。母上は小日向相馬製の兵器を頑なに拒んでいたからそこまで深刻なことには至ってないけれど、それでも津波のように波及した被害は必ず出てくる。地震を起こすことが本当にヤツにできるとしたら、行動も慎重にならざるを得ないしね」

『その通りです、キャーリサ。今は慎重に事の趨勢を見極めなければならない時。あなたほどのネームバリューが動くと、何が起こるか分からないのですよ』

「――――――――ッ!!」

『部屋にお戻りなさい、ヴォルティス。そしてその後、ヴィンザーへ送り届けます。くれぐれも、軽率な行動は控えるように。……これは、英国女王としての命です』

重々しいその言葉を前に、ヴォルティスはしばらく無言で貫いていた。その台詞に、具体的な何かを投げかけようと考えていた。

だが。

もう、どうしようもないことがどうしようもないほど分かり、

「……委細、了解しました」

絞るような言葉を、吐き出した。

踵を返す偉丈夫に、画面の向こうの声はふと、窓の外を見る。

曇天の空。鼠色にして灰色の空。そして硝子窓に当たる水滴を、ヴォルティスはどこか忌々しげに睨んだ。

雨が降っていた。
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