暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
Alicization
〜終わりと始まりの前奏〜
神立
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『許しましょう。さて、要件ですが、今あなたをブリテンの外へ出す訳にはいきません』
「なぜです……!」
画面の向こうの老婆は、ふぅと小さな吐息を吐く。たったそれだけの所作で、男の肩に乗る空気の重さは跳ね上がった。
『あなたの気持ちは分かります。日本で事件に巻き込まれたあなたにとって、かの仮想空間で培った人脈は離し難いものでしょう。心配なのも分かります』
そんなシステマチックでおざなりに語るものではない、と言いたいところをヴォルティスはすんでのところで堪えた。彼だって引くべき一線は心得ている。
そして叔母ではなく王の仮面を被るがゆえに、そんな男を見ているようで見えていない英国女王は、どこまでも高圧的に言葉を重ねる。
『ですが、今は時期が悪い。航空機事故に紛れがちですが、つい先刻先進国の主要都市で軽微な地震がありました。……それについては?』
「いえ……」
『はぁ……。昔から、走り出すとそれ以外が疎かになるのは変わりませんね。キャーリサ、送ったものを』
「はーいはいっと」
阿吽の呼吸で第二王女から差し出されたのは、どうやら表記される単語から地質学関連の報告書らしい。受け取ったそれの表面を撫でるように視線を動かしていたヴォルティスは、次第に顔色を変える。
そこには、全世界の主要都市直下をピンポイントで震源とする地震が、
同
(
・
)
時
(
・
)
多
(
・
)
発
(
・
)
的
(
・
)
に発生した証左が示されていた。
一つ一つは、地震列島である日本人であれば気にも留めないようなもの。
だがそれが、まったく同時刻。しかも一番異質なのは、地質学的に地震が起こるポイントではない箇所でも起こっている点だ。
地震というのはそもそも、地殻プレートが重なる箇所でしか起こらない。だからこそ、そういったプレートのすれ違いなどから遠いアメリカのニューヨークやオーストラリア、ドイツなど高層ビル群を躊躇なく並べられるのだ。そうでなければドミノ倒しを恐れて、そうそう建築できない。
日本などはその立地条件ゆえに伸びた耐震技術を使って建てているに過ぎないのだ。
重ねて念を押そう。
本来ありえないのだ、この位置での地震などは。
「これは……」
『……加えて、先程からEU首脳陣の間で巡らされている緊急のホットラインが非常警報を鳴らしています』
「な……」
絶句する偉丈夫を前に、英国女王はその顔にありありと疲労の色を刻む。
『あなたも方々へ手を回し、調べていたでしょう。小日向相馬……あの《鬼才》が作り出した先端兵器の数々。それが一気呵成に、持ち主だったはずの国の手元を離れたのです』
「そ……な、ん……。馬鹿な」
頭を殴打されたような衝撃が、意識を突き抜ける。
自らが
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