最終章 フフフフフ
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別歌手による収録はせず、音源そのまま。
敦子が作ったその曲は、歌の良さとアニメ人気とが合わさって、月間アニメソング売り上げランキング一位を達成、総合売り上げランキングでも最高五位。いわゆるスマッシュヒットを飛ばしたというのに、敦子に一円も支払われることもなければ、名前すらもどこにも出ていない。
と、八王子はそうした現状をいっているのである。
「最初の契約の問題で、どうしようもないことです。でも、あたしは別に不満はありません。現在のままで、充分に幸せなんです」
敦子はそういうと、にこり微笑んだ。
「でもさあ、名が世に出れば、そこからとんとん拍子にプロ声優への道が開けたかも知れないじゃないか」
「確かにおっしゃる通りかも知れないですけど。でも、いいんです。あたしは実力でプロ声優になりますから」
敦子は、さらに力強く微笑むが、その顔には、少しイラつきが浮かんでいるようにも見えた。
「こういうチャンスを逃さない、ということも実力なんだよ。そういう意味では、実力ないってことじゃん。もっと貪欲じゃなきゃあ、よほどラッキーがない限り声優になんかなれないよ。だって声優になりたい人って、五万といるんだよ」
「こっ、ここで今あたしのそういう話をして、なにがどうなるんですかああ?」
夢を見る資格を否定された、と思ったのか、敦子は怒気満面、八王子の顔へ自身の顔をぐいと近付けて睨んだ。
ぼろり涙がこぼれると、敦子の顔は一転してぐしゃぐしゃに崩れ、声を立て泣き出してしまった。
「あ、あ、ごめん。いい過ぎたっ」
我に返って、謝る八王子。
えっくひっくと泣き続ける敦子。
なんともいえない空気の重さが、どんよりと部屋を包み込むのだった。
2
ジャーン!
ジャンジャジャンジャーン!
ジャガジャンジャカジャンジャンジャン……
軍歌のイントロのような曲が流れ出した。
右翼の街宣車のような、いさましい音が。
黒い画面はムラがあり、保管状態の悪い大昔のフィルムのようになんだか汚らしく、古臭い。すみには、チラチラ糸くずが映っている。
軍歌が始まるとともに、ぼわーっとぼやけた白文字が浮かび上がる。
文字が出ては、溶けるように消えていく。
還れ。
還れ。
原点へ。
恨む。
怨む。
魂魄、雲星霜を突き抜け幾千里。
見ているぞ。
見ているぞ。
魔法女子ほのか
原点回帰委員会
九月弐拾四日
まほのへの
作品への、
観る者への、
愛すべき者への、
愛を無くした
金欲亡者どもへ、
原点回帰委員会が
いや、
否
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