再会
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だぜ」
カンバラは手にしたナイフを山内くんに向けて、せせら笑う。
「知ってるかぁ? ナイフってのは接近戦なら銃よりも有利なんだぜ。銃には『抜く』『構える』『引き金を引く』の三動作があるのに対して、ナイフは抜くと同時に切る! のワンアクションですむからだ。抜くと同時に相手の首を、頸動脈を切れば一撃でおしまい。殺さなくても腕の大動脈を切って戦闘不能にするって手もある。さぁ、おまえはどっちがいい、カンフー小僧」
首、腕、首、腕、首、腕――。
切っ先で山内くんの身体の二か所を交互に指し示し、威圧する。
刃の先が消えた。
「ッ!」
とっさに上体を反らしながら両腕を交差するようにして顔、首、胸をガードした山内くんの左耳に冷たい痛みが走った。
刃が飛んできたのだ。
バリスティックナイフ。グリップに内蔵したばねで刀身の射出が可能なナイフで、スペツナズ・ナイフとも呼ばれる。
射出されたナイフが山内くんの耳をかすって壁にぶつかり、地面に落ちる。
「ちっ、クソが……。次ははずさねぇ」
おなじ形状をしたナイフを出して威嚇するように見せつける。今のナイフをかわした動きは僥倖だった。次もおなじ動きができるとはかぎらない。
「あんた、なにやってんだよ……」
傷つけられた痛みよりも刃物に対する恐怖よりも、男に対する怒りのほうが勝っていた。
目の前が紅く、昏く染まる。
手前勝手な言い分を押しつけてくる相手に憎しみが、不条理なできごとに怒りがこみ上げてくる。
沸々、沸々と身の内から生じる暗い、昏い、冥い、負の感情に心が支配されてゆく。
たおしたい。
ぶっ殺してやりたい。
『汝が欲することを為せ』
頭のなかで声がした。声の主が自分に語りかけてくる。
『滅せよ、滅せよ。不遜の輩に誅罰を降せ。憤怒の槌にて頭を砕き、断罪の刃にて四肢を断ち斬れ』
(やめろ、僕に命令するな……!)
『我は汝、汝は我。汝の怒りは我が怒り、我が憎しみは汝の憎しみ。我が敵は汝の敵なり――』
ガアガアガアガア――、脳内でカラスの鳴き声が鳴り響く。
『命じよ、命じよ、下僕に命じよ。其は我と汝の忠実なる僕――』
ガアガアガアガア!
「死ねオラァっ!」
ガアーッ! ひときわ大きなカラスの鳴き声がすると山内くんの足下から黒い縄が伸びて放たれた刃を叩き落とす。
否、縄ではない。
蛇だ。
それもただの蛇ではない。蛇と呼んでいいものかもわからない。
それは、カラスの身につながっていたからだ。
頭と胴体はカラス、二本の足はまるで猿の手のような毛むくじゃらの形をしていて、尾の部分が黒い蛇になっている。
おからすさま、鉢割烏。そのような名で呼ばれ
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