再会
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を吐いてナイフを振りかざす。
「おらぁあっ! ボケッ、クソがッ、オラッ、オラッ、オラァッ!」
大声をあげて刃物を振りまわす姿は狂人だ。並の人間ならすぐにきびすを返してその場を離れたいと思うことだろう。
人は本能的に刃物を恐れる。
それがたとえ図工に使うような小刀やカッタータイフ。銃刀法に違反しない刃渡り六センチに満たない(それでも軽犯罪法に抵触する可能性はあるが)刃物であっても、普通の人なら刃物を突きつけられれば恐怖で委縮し、硬直する。威嚇や恫喝が目的ならば、それでナイフの役目はおしまいだ。
技術は不要。抜き身の刃を見せるだけでいい。
山内くんとて、刃は怖い。殴られただけでも痛いのだ。切られたり刺されたりしたらもっと痛いことだろう。最悪、死ぬ。
命を落とす。
それは怖いことだ。
怖い。
怖い、だからこそ戦う。立ち向かう。
山内くんは恐怖を覚えつつも、委縮することも緊張に身をこわばらせることなく平常心を維持することに成功した。
(ほとんど棒立ちのままナイフを持った腕ばかりでたらめに振り回している、まったく腰が落ちていない、典型的な素人剣法だ)
頭、肩、胴、腰、脚――。ギラつく刃に目を奪われることなく相手の全身を俯瞰して見る。
(いまだ!)
ナイフを持った手を回すように払い、そのままつかんで前に引っ張る。
「うおお!? げふっ!」
口ピアスの鼻先を自身が手にしたナイフがかすめる。これは相手の腕を使って視界を遮りつつ、脇腹に肘打ちを入れる技だったが、相手の攻撃を利用して手にしたナイフを顔や首に刺すという応用も可能だ。
さすがにそこまではしない、腋に鋭い肘打ちを叩きこむだけにとどめた。
脇の下は神経が集中して敏感なうえに骨や筋肉がなく、そこに受けた打撃は肺に直結する。人体急所のひとつだ。
激しい痛みと呼吸困難におちいり、口から泡を吹いて悶絶する。
これで三人がかたづいた、残りはリーダー。ナイフ男カンバラのみ。
「……てめぇのそれ、中国拳法かなんかか? 映画やゲームで見たことあるぜ、さっきの体当たりとか鉄山靠じゃね?」
鉄山靠。ただしくは貼山靠。肩や背中といった体の硬い側面や背面部を相手の腹部に叩きこむ八極拳の技のひとつ。大事なのは下半身の踏み込みで、足首の捻りによって生じた力に全体重を乗せて相手にぶちかます。
山内くんは八極拳を習っているわけではない。彼の通っている道場では打撃のほかにも崩し技、関節技、投げ技などなど、身を護る上で必要なあらゆる技術を古今の武術から取り入れており、そのうちのひとつを使ったのだ。
「カンフー使いかよ、強いじゃねぇか。光もの持った相手にビビらねぇとか、度胸もあるしよ。でもよぉやっぱ素手で武器に立ち向かうのは無謀
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