再会
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し、山内くん自身も脱兎の如く遁走。
「このクソガキッ!」
無抵抗な獲物からの予期せぬ反撃に激昂した男たちは高橋を無視し、山内くんを追って駆け出す。
(良かった、こっちに食いついたぞ)
足には自信がある。路地裏を抜けて表通り、人目の多い場所にまで出れば連中もあきらめるだろう。そう考えていた山内くんだったが、行き止まりにぶつかってしまった。
なにしろこの辺りは初めて訪れた場所だ、山内くんに土地勘はない。
追ってきた男たちのひとり、鼻ピアス男が山内くんに乱暴につかみかかる。
ふっ、と山内くんの身体が沈んだと思った瞬間、鼻ピアスが後ろに転倒した。かがんでから突き上げるようにして背中を使って体当たりしたのだ。
「げふぅッ!?」
みぞおちに肩が食い込んだ痛みと衝撃で、尻もちをついたように転倒し、蛙がひっくり返ったような無様な姿を晒した。がら空きになった股間めがけて容赦のないストンピング。
股間を踏まれた鼻ピアスは泡を吹いて悶絶する。
これでふたりが戦闘不能。
「マジかよ……」
舐めてかかった相手は実はヤバい奴だった。中学生とは思えない鮮やか手並みに口ピアス男の腰が引く。
「中坊相手にビビってんじゃねぇよ」
「で、でもカンバラさん。こいつなにか格闘技かなんかやってますよ、ヤバイっすよ、強いっすよ! おれ、わりと文化系なんでこういうの苦手っていうか……」
「おらよ」
「へ?」
カンバラはいじっていたバタフライナイフとは別の刃物を取り出して口ピアス男の手に握らせた。折り畳み式ジャックナイフだ。
「剣道三倍段て言葉知ってるか」
「へ? あ、い、いや、知らねっす」
「得物持ってるほうが強いって意味だ。これ貸すから刻んでこい」
剣道三倍段。
空手や柔道など素手の格闘家が武器を持った剣道家に勝つには三倍の段位、実力が必要。などと書かれることが多いが、これは漫画発祥の言葉であり、本来は槍や薙刀を持った相手に刀で立ち向うには、剣の使い手は相手の三倍の技量が必要。
という考えが元ネタである。
「いや、でもおれ刃物はちょっと……。刺さっちゃったらさすがにヤバイですよ」
「軽く撫でる程度に刻んでやるだけでいいんだよ。それともなんだ、あのガキ刻むよりおれに刻まれたいのか」
そう凄まれては嫌とは言えない。口ピアス男は手渡されたナイフを手にすごむ。
「おとなしく出すもん出しときゃ血ぃ見ないですんだのによ、恨むならてめぇを恨めよクソガキぃ……。おれらが脅しておまえらはビビって金を出す。そういう遊びなんだよ、これは。そうすりゃ遊びで終わってたんだ。おまえが病院送りになるのは、みんなおまえのせいだからな、オラァッ!」
やけになった口ピアスは手前勝手な理屈
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