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山内くんと呪禁の少女
再会
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あ?」
「だましたり脅したりしてお金を巻き上げようという行為は筋が通らない」
「……おい、さっさと済ませろよ」

 もうひとり、仲間がいたようだ。スケーターファッション三人組よりかは少し年かさ、二十代前半くらいの若い男で、ドレッドヘアーに迷彩柄のアーミーファッション。バタフライナイフをこれ見よがしにもてあそんでいる。
 どうやらこのナイフ男がリーダーのようだ。

「ごねるならごねるで、オレはいっこうにかまわないんだぜ」

 右手から左手、また右手。得意げにバタフライナイフアクションを見せつつ、ニヤニヤと見る者を不快にさせるにやけ笑いを浮かべる。

「お、おい。おまえらおとなしくオレらの言うこと聞いとけよ。カンバラさんキレるとヤバイんだよ、最近ナイフにハマってて、逆らうやつを刻むの楽しみにしてるから。むしろ逆らって欲しいんだ。マジ刺されるから、わかるだろ」

 わかるものか。
 話が通じる気配がしない。武器をちらつかせて脅迫してくるチンピラにいら立ちをおぼえる。
 これが半年前、あの出来事を経験する前の山内くんだったならば義憤とともに恐怖も感じていたことだろう。だがあの時以来、熱心に武道の鍛錬に励んできた山内くんには胆≠ェ出来上がっていた。
 人は暴力を恐れる。
 傷つくことを恐れる。
 抜き身の刃を突きつけられれば委縮し、顔面に拳が迫れば身体がかたまる。
 しかしプロボクサーは自分の顔にヒットする瞬間まで相手の拳を目で見ることができる。そうしないと避けられないからだが、なぜそのようなことが可能なのか?
 鍛錬を重ねているからだ。
 殴り、殴られ。痛み、暴力そのものに耐性を得るまで鍛えているからだ。
 いまの山内くんには目の前の破落戸連中に微塵も恐怖を感じない。

(でも、戦うのは最後の手段)

 山内くんが通っている道場の師範はこう言う。
 『君が悪人に襲われたとしても武道で相手を撃退しようとするのは思いあがりというものです』
 『女性や子供が多少腕が立ったところで、暴漢の体格がよかったり複数人相手だったりするとなんにもなりません。だいいち、暴力に訴えるのでは獣と変わりありません』と――。
 じゃあどうしたらいいんですか、とたずねる山内くんに師範は訓示を垂れた。
 『最初から危うきには近づかないことが最上です。人にも獣にも共通する安全の鉄則です』
 『気をつけていたにもかかわらず窮地に巻き込まれてしまったならば、人の知恵から使いましょう。説得や譲歩で危険を避けられるなら、それに越したことはありません』
 『それが通用せずして初めてファイト・オア・フライト=c…これは野生動物が敵と出会ったときの反応ですが、戦うか逃げるか≠ニいう選択肢が出てきます。逃げることを選びなさい、逃げ切れそうであるか
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