暁 〜小説投稿サイト〜
山内くんと呪禁の少女
再会
[3/10]

[1] [9] 最後 最初 [2]次話
出てくるの。パパのほうこそ楓さんに会いたいんじゃないの」
「なんでそこで楓の名前が出てくるんだ。おまえこそ本当は紺ちゃんに――」
「パパこそ本当は楓さんに――」

 山内親子の無為な会話は惡猛麗の開店時間まで続いた。



 ランチタイムの終了まで店の手伝いをした山内くんは日曜の街へとくり出した。
 特に用事があったわけではないが、家にいて朝の話題をぶり返されるのもいやだったからだ。
 ゆくあてもなくぶらりぶらりと街中を散策するのが妙に楽しい。この春から入学した賢真学院のあるあたりをうろついているのだが、ここはそれまでの山内くんの生活圏外に位置しているため、目にするものすべてが新鮮に見えた。
 見知らぬ店で、見知らぬ物を見て歩く。初夏と呼ぶにはまだ早い、皐月の薫風が吹く街中を軽やかに進む。

(あ、この映画。もう公開されてるんだ)

 映画館の前で足を止める。
 魔法使いの少年が主人公のファンタジー映画は、原作小説ともども世界的なヒット作だ。山内くんもかつては好きだったのだが、自身が呪術の世界に触れてしまってからは魔法や怪物、オカルトじみたものがどうも苦手だ。

(ほかにはなにが上映されてるんだろう……『ローン・オブ・ザ・リング』『タンクトップ・ミリオネア』『ダークバイト・ハイジング』……う〜ん、どれも僕の趣味じゃないなぁ。ん、『実録外伝キョンシー極道』? キョンシー化しても仁義は通す……。なんか、この映画を見れば度胸が磨かれそうな気がする)

 山内くんは筋の通らないことがきらいだ。なかなかに心惹かれる内容の映画であったがいかんせんR15+指定。山内くんの歳ではまだ見ることはできない。

「山内?」

 背後からの呼びかけにふりむくと、おなじクラスの高橋がいた。

「へー、山内もこういうとこに来るんだ。休みの日は引きこもって本でも読んでるのかと思った」
「うん、ちょっと散歩。高橋くんは、なにしてるの?」
「高橋でいいって、なんだったら下の名前で呼んでもいいぜ。そしたらこっちもおまえのこと下の名前の邪鬼丸で呼ぶから」
「山内でいいよ」
「もっとフレンドリーにあだ名とかで呼び合っちゃう? 邪鬼丸だからジャッキーとか、どうよ」
「それ、小学校のときについてたあだ名」
「なんだ、じゃあべつのにするか」
「だから山内でいいって。……高橋くんのことはくんづけで呼ばせて。呼び捨てって苦手なんだ」
「あ、いるよね。そういう人。山内もそっち系の人なわけだ。で、なにしてるの? 映画?」
「ううん、そんなにお金もってないから、ほんと散歩してるだけ」
「じゃあいっしょにゲーセン行こうぜ、金ならおれが出すよ。小遣いもらったからちょっと余裕あるし」
「え、そんな。悪いよ」
「えんりょすんなって」

 山内
[1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ