再会
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ていた。
「邪鬼丸っ! どうした!?」
二メートルを超える身長にプロレスラーのようなたくましい体躯をした大男が部屋に飛び込んできた。スキンヘッドのうえに眉毛もないという、いかつい顔をしたこの大男は悪夢にうなされていた少年、山内邪鬼丸の父親だ。
華奢で色白、時代劇に出てくる天草四朗や森蘭丸の役が似合いそうな少年とは似ても似つかないふたりだが、戸籍の上ではれっきとした親子である。
「だいじょうぶ、平気だから……」
喫茶店『惡猛麗』ここが山内くん親子の今の住まいである。
去年まで住んでいたアパートは火事で全焼。新居を探すにも財布に見合った住居は見あたらず、当座の雨露をしのげる場所に山内くんのパパがオーナー兼マスターをしている喫茶店にころがりこんだのだ。
物置状態だった奥の間と二階の空き部屋を整理してみたら以外にも広く、最初のうちこそ埃っぽさに辟易したものだが住めば都。思っていた以上に快適な生活が送れている。欠点と言えば内風呂がないことくらいだが、歩いてすぐの場所に銭湯があり、いざとなれば台所を使ったザ・流し風呂でどうにかなる。
それまでパパと相部屋だった山内くんだが、中学生になったことだしと二階の空き部屋を自室にもらうこととなった。
「楓ちゃん……十妙院に診てもらったほうがいいかもな」
朝食の後かたづけをしながら山内くんのパパは毛のない眉――ぐれていた十代のときに永久脱毛済み――をひそめて思案げにつぶやいた。
十妙院。
兵庫県神明郡明町の山村にある呪術を生業とする古き血筋の家。呪禁師と称して風水を見たり卜占をおこない、呪詛や霊障から人々を守る。呪術家業の十妙院。
去年の夏、山内くんはとある事情からその地へゆき、事件に遭い、その身に人ならざる存在を、太古の悪神を宿すことになってしまったのだ。 ※くわしくは角川ホラー文庫より発売中の『山内くんの呪禁の夏』全二巻を参照。
そんな文庫本二冊に収まるほどの顛末ののち、街へと帰り呪術とは無関係な日常生活を送っていたのだが、雲行きが怪しくなってきた。うなされて飛び起きるほどの悪い夢を繰り返し見るというのは普通ではない。山内くんの身に呪的霊的な障害が起きている可能性がある。
そのようなたぐいのものであれば通常の医療は効果がない。十妙院の霊的療法に頼ることになる。
「だいじょうぶだって、まだ里帰りって季節でもないでしょ」
山内くんの家も源をたどれば十妙院とおなじく呪術者の家柄。それも祝部という十妙院以上に呪術に秀でた家系であった。
だがそれはもう過去の話。
いまの山内親子には呪術に対する備えはない。
「でもほら、ひさしぶりに紺ちゃんにも会えるぞ」
「……なんでそこで紺の名前が
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