267部分:第十九話 お化け屋敷その九
[8]前話 [2]次話
第十九話 お化け屋敷その九
「無口で何か醒めた感じがするよな」
「はい」
「それで何考えてるかわからないしな」
「そんなところありますか」
「ああ、あいつとはいつもありのまま話してるんだよな」
「そうなんです」
それが二人の関係なのだ。本当にありのまま話をしているのだ。
「だからそういうのは感じないか」
「最初はそうだったかも知れないですけれど」
「そうか。それってつまりは」
「つまりは?」
「それだけあいつと波長が合うってことだよな」
陽太郎は月美の顔を見てだ。微笑んで告げた。
「月美は」
「波長がですか」
「あいつと波長が合う奴ってあまりいなかったんだろうな」
「愛ちゃんとですか」
「けれど月美は合った。それで二人仲良くなれたんだよ」
「私達それで」
「そうさ。多分それってな」
陽太郎は微笑みから確かな笑顔になってだ。それでさらに話した。
「あれなんだよ。運命なんだよ」
「運命ですか」
「ああ、運命なんだよ」
それだというのである。
「二人が会ったのってそれなんだよ」
「あの塾で」
「お互い友達がいなくても友達になれたよな」
「はい」
「出会いがあってな。やっぱりそれって運命なんだよ」
「そうなんですか」
「だからさ。あいつにとってもさ」
椎名のことを考えてだ。そのうえで話を続ける陽太郎だった。
「月美と会えたことって大きいんだよ」
「そういうことなんですか」
「自分が傍にいてもいい話を聞いてくれる。そういう相手だからな」
「だから私が」
「それでだよ。月美にとって椎名がかけがえのない相手なのと同じで」
「はい」
「椎名にとっても。月美はかけがえのない相手なんだよ」
「そうですか」
そこまで聞いて頷いた月美だった。
「私達ってそんな」
「多分月美と会ってあいつも変わって」
「そうして?」
「赤瀬とも付き合ってそれでこの学校に来て俺達とも会って」
「どんどん動いたって感じですね」
「月美もな。お互いがあって変われたんだよ」
こう話す陽太郎の目はだ。これまでになく温かいものだった。その目で話すのである。
「そういうことじゃないかな」
「そうですか」
「だから別に卑屈になることもないしさ」
「はい」
「おどおどすることもないよ。月美はさ」
「わかりました」
陽太郎の言葉にこくりと頷いた。
「それじゃあ」
「俺だっているし」
ふとだ。意識せずに自分のことを話に出した。
「だからそれもあってさ」
「陽太郎君も」
「何かあったら何でも言ってくれよ」
また微笑みになっての言葉であった。
「何でもさ」
「いいんですか、それって」
「ああ、いいよ」
実際にいいのだというのだった。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ