巻ノ百四十四 脱出その七
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「王道を歩むならまず法じゃ」
「それをしかと定め」
「それを以て治めるべきですな」
「法によって天下も民も護る」
「それが幕府の役割ですな」
「それを徹底していく、だから謀をこれでもかと働かせる者はな」
本多正純、彼の様にだ。
「これからはいらぬ」
「あくまで、ですな」
「法を進める者が必要で」
「正しき政が出来る者」
「そうした者を用いていきますな」
「そうしていくとしよう」
是非にと言う秀忠だった、そうしてだった。
彼は江戸へと戻っていった、彼は戦を勝って終えたがそれで終わりではなくむしろそれからを見て考えていた。
戦は終わった、だが多くの者はそこからこれからのことを考えていた。それは家康や秀忠だけではなかった。
秀頼は抜け穴から出た、するとすぐに木下延俊が出てきて彼を迎えてきた。
「よくぞご無事で」
「うむ、源次郎達に助けてもらった」
「真田殿、お見事なお働きでした」
木下は秀頼の傍らにいる幸村に抱き締めんばかりにして歩み寄り彼に篤く礼を述べた。
「これでそれがしも忠義を果たせました」
「豊臣家恩顧としてですな」
「はい、それでなのですが」
「これよりですな」
「船を用意しております」
木下は幸村にこのことも話した。
「ですから」
「すぐにその船に乗り」
「瀬戸内の海に出て下さい」
「そしてですな」
「海に出ればすぐに加藤殿の船がありますので」
「その船に移り」
「そこから肥後に入られて下さい」
まずはこの国にというのだ。
「そしてです」
「それからですな」
「薩摩に逃れて下され」
「それでは」
「既に国松様は昨日のうちに別の船で」
「肥後に向かわれていますか」
「そうされています、主馬殿と共に」
治房、彼と共にというのだ。
「そうされています」
「国松様も主馬殿もご無事ですか」
「昨日それがしが送らせて頂きました」
他ならぬ自分自身がとだ、木下は幸村に答えた。見れば妹である北政所に実によく似た顔立ちである。
「ですから」
「ご無事なのもですか」
「しかと言えます、では」
「はい、これよりですな」
「真田殿もお乗り下され」
秀頼が乗るその船にというのだ。
「そして肥後から薩摩に」
「わかり申した、では」
ここでだ、幸村は今も共にいる十勇士達それに大助も見て述べた。
「この者達も」
「おお、ご子息の大助殿にですか」
「我が家臣であり義兄弟である者達です」
「十勇士ですな」
「この者達も激しい戦でありましたが生き残りました」
それも全員だった、どの者も身体のあちこちに傷を負っているが五体満足で目や耳を失っている者もいない。
「この様に」
「それで、ですな」
「はい、この者達も薩摩に連れて行きたいのですか
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