プロローグ 心の魔物
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喚師ではなかった非常に稀有な例である。彼の召喚の才能は後天的だ。後天的召喚師なんて、歴史書に二人しか見つからない。彼はそれほど希少な存在だった。
昔、無力だった彼は「力を」と願った。状況すべてを打破する力が欲しいと。彼は弱すぎる魔法の才能しか持っていなくて、そんな自分が嫌で嫌でたまらなかった。当時王国は内乱によって疲弊し、一刻も早くそれを収める優秀な人間が必要だった。彼は強い愛国心の持ち主で、何の役にも立たない我が身が大嫌いだった。その思いは日増しに強くなり、内側から彼を苛み続けた。
そしてその願いは、ある時叶った。理由はわからない。ただ、その時から急に、彼は召喚術が使えるようになったのだ。消えたのはちっぽけな魔法の才。それと引き換えに彼は、これまで己の知覚できなかった「別の世界」をはじめて知覚することができるようになり、それを自覚すると同時に、彼の頭の中に沢山の「縛りの言葉」が浮かんできたのだ。ここに新しい召喚師は誕生した。その後の彼は召喚師として一気に成長して目覚ましい功績を上げるようになり、自分のコンプレックスとなっていた劣等感から解放された。彼は国のために役に立てるという喜びを、全身で味わうようになった。それは彼が最も理想とする未来。そんな未来への切符をその日、彼は手にしたのだった。そして彼は国のために粉骨砕身し、自分のことをまるで省みないようになった。
リュクシオンは神を信じない。信じても無駄、助けは来ない、そんな世界に生きてきた。しかし彼に起きた奇跡は、何もできなかった彼が急に「力」を手に入れた理由は。神の御業であるとしか、彼は考えられなかった。歴史書の二人も「奇跡によって」「神によって」、後天的な召喚師の力を手にしたという発言があった、との記録がある。神はいない、いるとしても童話の中だけだ、そう信じられている世界だけれども、彼の全てが変わったあの日、彼は明らかにこの世のものではない不思議な声を聞いたのだ。
リュクシオン・エルフェゴールはその力を使って、今まさに彼の愛する国を奪おうとしている侵略者たちから国を守ろうとしている最中だ。そのためにずっと魔力を練って、「ある存在」を召還した際に、「それ」がこの世界へ来るときの道を作っているのだ。道がなくては応じたくても応じられない。彼が呼び出すのは相当に強い力の存在だから、その分道を大きく強くしなければならず、だから三日三晩も寝ずに作業をしているのである。
そして今、彼はここにいる。その力を見初められ、王の側近として、ここにいる。力がなければ、決して昇りえぬ地位に。望んでこそいなかったが、決して悪くは無い地位に。
リュクシオンは、疲れた顔の上に不敵な笑みを浮かべた。
――だから、利用させてもらうよ。
この状況を打破できる、唯一無二の召喚術。国を守るために過去の文献をあさり、そ
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