暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
Alicization
〜終わりと始まりの前奏〜
天泣
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ような機関は必要ない。

だが、最先端兵器は往々にしてデリケートになりがちだ。そのいい例が米軍のB-2とかで、同重量の金よりも高いなどという暴挙を起こしてしまっている。

ゆえに《M5》もその慣例に従い、顕微鏡のレボルバーという、いささかおおざっぱな基本設計ではあるが、その雑さを支えるためのえげつない先端技術が所狭しと詰め込まれているのだ。

そして、そのためのメンテナンス要員が通れるような空間も当然、用意しなければならなくなるというのもまた自明の理。

だが、空間と言って通路などと呼称しないのは当然、そのような余裕などないということを表わし、自然的に用意されたそれは整備された隘路などとは間違っても呼びたくない、どちらかといえば戦車の操縦席のように機器類の合間を縫うようなものだった。

そして。

基本的に無人機のために照明類どころか手すり等もない、バリアフリーの精神などまったくない真っ暗な機内。四方八方、上下左右、機器に覆い尽くされるような空間の中にポツンと突き出る、メンテナンススタッフ用の音声補助マイク。

本来ならばメインのシステムが異常を検知、整備員に報告するだけの、あくまで音声を受け取るのみで発信できるとすれば既定のレスポンスくらいなのだが――――

ポン、と。

軽い電子音が、無人の艦内に鳴り響いた。

『code666を《Os-G1#FFFFFF》、変異層圏(ミラーレイヤー)より受理。並びに地中から《Os-G2#FFFFFF》、地殻偏差(ブレードプレート)の解凍用初期微動をキャッチ』

男の、声だった。

合成音声なので、とくに深い意味はないのだろうが、耳障りな甲高い男の声。

誰もいないので聞く相手もいないのだが、突如喋り始めたその声は独り言というよりはチェックシートを埋めるような無機質さで言葉を重ねていく。

『艦内精査。工作要員の生体反応は確認できません。《Gコード》との一般相互リンク権限並びに艦内システムの最終キーコードを取得。code666の進行状況を確認』

『code666、八割の進行完了を認識。当機の出航を急ぎます。ザ・シードの上層(オーバーレイ)ネットワークへのアクセス成功。データベース《M∴M∴M∴》に同期。他種Osシリーズを精査、分析し、当機のアップデートが図れるものをピックアップします』

『艦内システム、アップデート。MHD動力炉からの全エネルギー流路を開放。貯蓄用副炉心の充填率81%。サブプロセッサ、全ロック解除。艦内気密、砲身回転コネクタ、全火器フルチェック、オールグリーン。各種観測システム群、感度良好』

ヴン、ヴヴン。

微かな起動音とともに総重量一万五千トンの、黙示録の騎士が目を醒ます。

その冷たい無機物の身体に血が通い始め、鎌首を
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