暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
Alicization
〜終わりと始まりの前奏〜
天泣
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主要な人物達が勢揃いしていた。

本来ならば、このような光景はありえない。この基地は存在しないということで情報戦での視界から外すことを主体にされている。そこに軍の高官連中が出入りなどすれば、馬鹿でもここに何かあるはずだと勘付くはずだ。

だが、それを押してまでの緊急事態が起こっていた。

ありえない事態はさざめきを伝播させ、すでに西海岸付近全体を覆っていた。その雰囲気はスタッフ達にも伝言ゲームのように伝わり、どこか空気が浮足立っている。

そんな中、基地司令官のお偉いさんは分厚い紙の資料に一通り目を通すと、それを適当に放り投げた。役に立たない紙屑をブーツの底で踏みつけ、彼は口角泡を飛ばす。

『宇宙からだと?まさか本当にお前まで宇宙人の仕業とか、ローカルのニュースでやっと取り上げるくらいの単語を羅列するんじゃないだろうな?』

『正確には大気圏の上層部、電離層の辺りから発信されています。……いえ、どちらかと言えば、これは変換させている、と言った方がいいでしょうか。衛星から発信された信号波が、途中で電離層辺りにあらかじめ仕掛けてあった何かを通し、ちょうど変圧器にかけられたように波長が歪められたのです。そのような特殊な方式での限られた限定コマンドなので、技術班の失態というのも酷な話かもしれません』

お偉いさんとは違い、落ち着き払っている補佐官の男のほうに、スタッフ達の目線は自然と集まる。依存というか、こういう空気だと自然と人は縋る先を探してみたくなるものだ。

『おそらく、電離層に漂っているのは、去年の暮れにノルウェーの人工衛星が打ち上げ失敗という名目で、高高度にてバラ撒いていたものでしょう。それが今頃になって起動した』

『ノルウェー?今回のことは、ノルウェーが主催だとでも?……いや、違うな。違う、そうだとしても手段の一つの要因というだけで、完全に全て実行できる訳ではない』

そしてそれは司令官も同じ。補佐官の冷静沈着さに引っ張られるように、血管から余熱が吐き出され、代わりに思考のギアが上がっていく。

『だが……電離層だと?確かアレは、短波帯の通信に大きく関わっているんじゃなかったか?』

大気圏上層、オゾン層の一つ上にある電離層は、太陽光線に晒されて電離状態にあるイオンと電子が多量に存在する区間を指す。この空間はオゾン層とともに地表の生物を有害な紫外線やエックス線から守るという役割も果たしているが、ある種の電波を反射する性質を持つことで有名だ。

その性質を利用し、ラジオなどの放送用電波を長距離へ届けるための橋渡し役になっている。

『その通りです、司令。ですが、問題は短波帯だけではありません。電離層を利用しないとはいえ、衛星電話やGPSに使われる長短波帯の電波はその仕様上、道程で電離層を通過します
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