先はどこに
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フョードル・パトリチェフは困惑していた。
それはアレス・マクワイルドが果たして優秀といっていいものだろうかということだ。
彼は自分自らが優秀だと思ったことは一度もない。
運がよく優秀な人物に仕え、運がよく昇進し、そして運がよく作戦参謀に配属された。
その一方で優秀と呼ばれる人間はよく見てきてもいる。
最近では、かのエルファシルの英雄だ。
まだ若き英雄は、エコニアで発生した騒乱を見事な手腕で抑えた手並みは未だに覚えている。自分などはさほど役には立たなかったかもしれないが、協力できたことは喜ばしいことだった。
そういう意味では、優秀だとの前置きをもって配属されたアレス・マクワイルド大尉も間違いなく優秀と呼んでいい人物であった。
まず仕事に慣れてもらうために任せた雑用。
本来であれば参謀見習いである少尉や中尉がいる中で、大尉の階級である彼がやるべき仕事ではなかったかもしれないが、それでも初めての仕事に慣れてもらうという意味と彼の性格を見るという二つの意味で彼に任せることにした。エリート意識があるならば嫌な顔一つでもしただろうそれを、彼は不機嫌になることもなく、確実にこなした。
それだけでもパトリチェフは十分であった。
仕事を確実にするということは、仕事を任せられるということでもあるのだから。
仕事ぶりもさすがはセレブレッゼ少将の元で鍛えられただけはあると感心するものだ。
これで仕事に慣れれば一月もすれば他の人間と同様に仕事を割り振ることができるだろうと考えていた。単純に楽ができると喜んでいた。
「中尉。忙しいなら、手伝う。今やっている仕事を教えてくれ」
だが、アレスはそこで終わらなかった。
一週間ほどしたある日、突然立ち上がると周囲の人間に声をかけていった。
誰が何をしているのか、手伝えることはあるのかと問いかける。
最初は誰もが一週間でわかるはずがないと思っただろう。
パトリチェフにしてもそう思っていた。
だが、中尉が立案していた訓練艦隊の補給計画について、後方勤務本部の経験をもって見事に修正するのをはじめとして、カプチェランカでの小隊長の経験を生かした訓練の計画など自らの持つ知識で計画に磨きをかけていった。
そうなれば、パトリチェフのところに上がってくる報告はほぼ手直しが必要のないものだ。いくつもあって長い作業で停滞を見せていた業務が、ダムが決壊したかのように次々と進むようになり始めた。
まさにそれは中尉と自分の架け橋であり、今後アレスに期待することであったのだが、それを言わずとも見事に担ってくれたわけだ。
だが、単純にさすがだとパトリチェフは喜べなかった。
もし、これが長年勤めた下士官や配属して経験の深い士官であったなら単純に喜んだ
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