先はどこに
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漏れるという可能性は考えなかったのかね」
「漏れるのを防ぐのが情報参謀役割でしょう。何もしなければ、一切情報は漏れません。いっその事、訓練をやめますか」
アレスは肩をすくめた。
「それに既に勘の良い艦隊司令部の人間は、まもなく大きな戦いがあることを理解していましたよ。何十年、同じことをやっていると思っているのですか。現場の人間だって馬鹿じゃない」
「つまり各艦隊の人間にもある程度知らせる必要があると、大尉は考えるのかね」
「ええ。何も馬鹿正直にイゼルローンを攻略するとか、並行追撃作戦を行うという必要はありません。けれど、何も知らされずに上だけで話を進める必要はないと思います。実際にこのままで訓練を行ったとしても、何ら能率はあがらないでしょう。及第点には持っていけるでしょうが、それだけです。どこまで知らせるかは、訓練の必要な練度と情報統制の関係次第でしょうね。仕事は増えますが、何もせずにただ部屋にこもっているよりかはいいかと」
「なるほど」
と、アロンソは一言そういうと、黙った。
両手を組んで、机の上に置く。
「それが君の考えか」
「ええ――」
「違います!」
アレスの同意の言葉に、かぶせるようにパトリチェフの大声が響いた。
「アレス・マクワイルド大尉は、問題点を指摘しただけにすぎません。だが、それに対して許可を出したのは小官です」
ハンカチを握りしめて、パトリチェフは断言した。
「実際に彼が行動して、仕事の進捗は非常にはかどっております。それについては先日送りました報告に記載のとおり。これに問題があるとすれば、全て小官の責任です」
「当然のことだろう」
パトリチェフの断言に、アロンソは当然といったように口を出した。
「部下の行動を把握しない上官など不要。部下の責任は全て上官の責任だ」
そう言って、アロンソは組んでいた手を外した。
鋭い目がパトリチェフとアレスをとらえている。
パトリチェフは再び汗を拭った。
動揺を隠せぬパトリチェフに対して、一切の妥協を見せずこちらを見る若い青年。
瞳に込められた力は、何を言ったところで反論して見せるという強さだ。
強いな、だが。
思いかけた言葉を止めて、アロンソは言葉を紡ぐ。
「マクワイルド大尉。これからも自由に動くがいい、私が許可をする。各艦隊に連絡する情報の内容については、小官の方からリバモア少将とビロライネン大佐にお伝えしておこう。それまでは現状を維持するように、以上だ」
パトリチェフがハンカチを額に押し当てたままに、大きく目を開いている。
なんだと、いささか不愉快そうにアロンソが口にした。
「不思議そうな顔をするな。私は必要だと思ったことを指示しただけだ。だが」
と、そこで冷たい視線がアレスを捉える。
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