先はどこに
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格であると同時に得難い才能でもあると思った。
ヤンが徴用したのも理解できる。
二人連れだって、アロンソの執務室に入った。
「随分と楽しそうだな、パトリチェフ少佐。呼び出されて、楽しい話でもされると思ったのか」
凍てつくような声に、パトリチェフの表情が固まった。
声が大きいというのも、損な部分もあるようだ。
+ + +
「さて、呼んだのは他でもない。マクワイルド大尉――君は他の作戦参謀に顔を出しているようだね。そんなに暇なのかと、小言がビロライネン大佐の耳に入ったようでね。ビロライネン大佐もお怒りのようだ」
「机上で仕事をしているだけでは、足りない部分があると思ったからです」
「足りない部分?」
「情報の共有化です。他の部署が何をしているかは、全て他の参謀が上にあげ、それが主任情報参謀に伝わり、私たちに落ちてくる。それでは情報の新鮮さに欠けますし、何より正しい情報とは限りません。どういった意図を考えているのか、それを理解しなければ、訓練計画など机上の空論に終わります」
「私が間違えた情報を伝えていると」
「先日、作戦参謀から敵艦隊への突入については、周囲との同調よりも速度を重視するようにお伝えいただきました」
「それが間違えだと」
アレスは首を振った。
「いえ。作戦参謀の意見はもっとひどいものです。周囲の同調を完璧にして、なおかつ速度を現状の倍を求めているようです。で、なければ並行追撃にならず引きはがされる可能性があるとの試算でした」
淡々と語るアレスの言葉に、冷たい相貌で見ていたアロンソの眉にしわがよった。
「それは初耳だな」
「でしょうね。ただ、現状の倍ということだけが独り歩きをして、こちらには同調性よりも速度を重視しろと連絡が来たようです。どこで捻じ曲げられたかは問題ではありませんが、それで訓練計画を立てていた場合には、訓練不足となる可能性が問題です。作戦参謀にはすぐに訂正の報告書を送るように伝えましたし、こちらもその予定で訓練計画を進めていくつもりです」
「なるほど。それが足りない部分の一例というわけか。では、艦隊司令部の方に顔を出しているのはなぜかね、暇つぶしの雑談しかしていないと聞くが」
「現場のことを知らないで、なぜ参謀ができると思うのです。戦うのは各艦隊の人間ですよ」
冷静な指摘に対して、アレスが言葉にしたのは真っ向からの反論だ。
隣で聞いていたパトリチェフはしたたり落ちる、汗を拭った。
だが、アロンソは一切表情を変えず、ただ鋭い眼光でアレスを見る。
同じように見るアレスは、目つきの悪さも相まって、相互が睨みあっているようだった。
「他の情報担当が調べた限り、作戦のことは話していないようだが。情報参謀が艦隊司令部に顔を出せば、どこからか情報が
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