先はどこに
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面倒も見ている。
仕事の進み方も今までと変わらない。むしろ、慣れてきた分だけ早くなっている気さえするが。仕事はよくできる。だが、配属してわずか三週間で席から消えるようになった新人を、果たして優秀と呼んでいいかパトリチェフは悩んでいたのだった。
+ + +
「パトリチェフ少佐。マクワイルド大尉と一緒に部屋に来てくれ」
鋭い瞳で告げられて、パトリチェフはやはりと大きくため息を吐いた。
仕事自体は進んでいるとはいえ、中佐の目にもマクワイルド大尉が消えているのが目に入ったのだろう。実際に、マクワイルド大尉は、パトリチェフの許可を取ってから頻繁に自分の席から消えている。
その理由をパトリチェフは決して知らないわけではない。
事前に、今日はどこに行ってくるか周囲に伝えてから消えるからだ。
その後に持ってくる報告書で、事細かに他部署の情報が報告される。
つまり、こちらに正式な報告が来る前に概要が把握できる。
残念なことながら、組織は大きくなるほど情報の伝達は遅くなる。
艦船に故障が見つかれば、それの報告をするのに一日。そこから上を経由して、パトリチェフのところに伝わるのは早くても三日かかるだろう。だが、アレスがどこからか――いや、正確には現場で聞いているのだろうが、それを伝えてくる。
本来ならば、無駄に終わる仕事が少なくなるのだ。
逆にこちらの情報を伝えることで、他部署の無駄な仕事を減らしているようだ。
アレスの長い散歩は現場の人間にはおおむね好評で、そして上司には不評であった。
忙しいことが美徳であると考える人間には、ふらふらと歩いている人間は目立つ。
情報参謀は暇なのかと嫌味を言われたこともあった。
おそらくは、それがアロンソ中佐にも伝わったのだろう。
彼は情報部畑の出身であり、現在も情報部に在籍する傍らでこちらに応援で来ている。
寡黙ながら、非常に細かく、パトリチェフも苦手とする人物だ。
心が重くなるのを感じながら、また散歩から帰って来たアレスに声をかける。
中佐から呼ばれたと聞いて、さほど驚いた様子はなかった。
随分と肝が据わっているようだ。
「なら、早く行きましょう。同じ怒られるなら早い方がいいですからね」
どこか悪戯を怒られる子供のような顔で言った。
そんな表情を見れば、パトリチェフは思わず苦笑する。
元より深く考えることは苦手な性格だ。
「なに、謝ればアロンソ中佐も許してくれるだろう」
「ご迷惑をおかけします」
「最初に許可を出したのは俺だからな。気にするな」
パトリチェフはがははと大きな笑い声をあげた。
その様子に、どこか心配そうにこちらを見ていた部下たちが安心したように笑う。
そんな様子に、アレスは得な性
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