251部分:第十八話 運動会その九
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第十八話 運動会その九
「だから気にしないで」
「そうなの。だったらいいけれど」
「まあとにかく頑張ってね」
「優勝よ、優勝」
「ええ、それじゃあ」
星華はここでトマトジュースを出してきた。パック入りでストローで飲むものだ。二〇〇ミリリットルのそれをストローで一気に飲んだ。
そして飲み終えてからだ。気合を入れた顔で言った。
「じゃあ行って来るわね」
「本当に大丈夫なんだろうな」
「これまで四つも出てるのに」
「最後の最後でマラソンかよ」
「考えてみれば無謀だよな」
男子連中がここで話した。
「出るって言って聞かないしな」
「どうしようもないからな」
「全くな」
「だから。優勝するって言ってるのよ」
星華はその彼等に堂々と言い切ってみせた。
「わかる?私が優勝してね」」
「そこまで言うんなら頑張れよ」
「ああ、一等以外じゃないと承知しないからな」
「いいな」
「だからわかってるって言ってんのよ」
いい加減切れたところを見せる星華だった。
「大体ね、それって杞憂だし」
「優勝しないことか」
「それか」
「そうよ。伊達に毎日走ってるわけじゃないわよ」
部活でだ。このことを話したのである。
「そういうことよ」
「それはわかってるけれどな」
「僕も、一応は」
「俺も」
「じゃあ黙ってなさい」
星華は今度はむっとした顔で返した。
「いいわね」
「まあそこまで言うんならいいけれどな」
「本当に頑張れよ」
こうした声を受けてマラソンの場に向かう星華だった。そしてだ。陽太郎と椎名もここで話をしていた。応援の合間で立ちながらである。
「なあ」
「何?」
「マラソンの選手が集まってるけれどな」
「最後の競技ね」
「これで向こうが一等になったら負けるぜ」
陽太郎は不安になっている声だった。
「点差を見たらな」
「そうね」
「そうねって今回も冷静だな」
「冷静なのは当然」
椎名はここでも相変わらずである。
「それは」
「当然か」
「だって。勝てるから」
だからだというのである。
「三組は二人出してるけれど」
「ああ、二人な」
「その二人で一等と二等」
「独占かよ」
「だからいける。何の問題もない」
こう陽太郎に話すのだった。
「うちが優勝する」
「確実か」
「若しどっちかが怪我したりアクシデントに遭ってももう一人いる」
その場合も考えているというのである。
「だから安心」
「最後の最後で優勝を確かなものにするっていうのか」
「そういうこと。最後に勝っていることが大事」
「最後にか」
「そう、劉邦と同じ」
漢の高祖である。
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