250部分:第十八話 運動会その八
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第十八話 運動会その八
「何だ、このハンカチ西堀のだな」
「西堀さんから借りてました」
「そうか、借りたものはちゃんと返さないとな」
「はい」
実は月美からわざわざ借りたのである。これが今回の椎名の策略であるのだ。
「それじゃあ今から」
「ああ、いい」
だがここで主任先生が自分から言ってきたのだった。
「椎名はもう自分のクラスに帰りなさい」
「自分のですか」
「これは先生が西堀に返しておく」
主任先生はマメで親切な性格である。細長いモアイかバナナを思わせるその顔にある目は実に優しい。教師達からも生徒達からも人望のあるいい先生なのだ。
「だから椎名は帰りなさい」
「いいんですか、それで」
「いいとも。西堀は四組だったな」
「そうです」
「じゃあ先生が四組に行って西堀に返しておく。それじゃあな」
「すいません」
「御礼はいい」
こう返す先生だった。
「それよりもだ。今は戻りなさい、いいね」
「わかりました」
こうしてだった。主任先生は四組に行きそのまま四組の監督になった。椎名は一人になったところでこっそりと勝利のブイサインをするのであった。
その四組は主任先生が来てとりあえず喧嘩はしなくなった。しかしであった。
四組は次第に点数が伸びなくなってきていた。三組に常に遅れを取るよううになってきていた。
「おい、まずいだろ」
「このままだとな」
「負けるんじゃないのか?」
まずは男子達が不安を感じだした。
「優勝するんじゃないのか?」
「そこんところ大丈夫なのかね」
「そうだよな」
「まずいんじゃないのか?」
「大丈夫よ」
しかしここでまた星華が言うのだった。
「最後の最後で大逆転よ」
「マラソンよね」
「やっぱりそれよね」
「ええ、そうよ」
また州脇達に応えて言う星華だった。
「そこで決めるから安心して」
「うん、じゃあ星華ちゃん御願いね」
「最後の最後で決めて」
「それで優勝よ」
「そのつもりよ。見てなさい」
星華は三組の応援席を見据えて言い切る。
「勝つのは私達なんだからね」
「あのゴミチビがいるね」
「何よ、あのチビ」
「いつも鬱陶しい」
三人は椎名を見ていた。彼女は今赤と白のチアガール姿で三組の応援に回っている。その横には白ラン姿の陽太郎もいる。
「澄ました顔でチアガールなんかしてね」
「胸小さいから全然似合ってないっての」
「そうそう」
こう忌まわしげに口々に言うのだった。
「見てなさい、その澄まし顔もね」
「星華ちゃんが打ち砕くから」
「精々今のうちに楽しんでおきなさいよ」
「そのつもりよ。それに」
星華はここで椎名の横を見た。その彼をだ。
「いいところ見せないとね」
「いいところって?」
「
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