ep23 ガンダムマイスターの総意
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ティエリア・アーデはプトレマイオスーー通称『トレミー』のMS格納庫にいた。彼が立つデッキの下には、自身の機体であるGN-004、ガンダムナドレが仰向けに固定されている。
ラグランジュ1付近での国連軍との戦闘で、ヴァーチェの外装が全体的に破損してしまった。だが、手元にヴァーチェの予備パーツはない。そこでやむを得ずナドレに換装したのだ。
メカニックマンのイアン・ヴァスティがこちらに向かってくる。彼は先ほどまで、スメラギに現在の整備状況を伝えていた。スメラギから6時間でメンテナンスを終わらせるよう指示を受けているのを、ティエリアは遠目で見ていた。
イアンはデッキの柵を掴んで浮遊を抑え、口を開いた。
「ヴァーチェは使えん。その代わりナドレには専用の武器を用意した。敵さんとはいずれ戦闘になるだろうが、今は休んでいた方が良い」
ナドレには、ヴァーチェとは別の武装として、GNビームライフルとGNシールドが用意されている。実戦での使用は初めてだ。
イアンの言葉を受けて、ティエリアは毅然とした態度で答える。
「機体の整備を手伝う。人手が足りていない」
「仕事を取るな。スメラギさんは叱咤したが、ワシ1人じゃない。ハロやカレルがいる。ワシらは生き延びなきゃならん。そのためにはお前さんやアレルヤたちの力が必要だ。ここは休んでおけって」
「……了解。また後で調整にくる。機体をよろしく頼む」
「ああ。任せろ」
ティエリアは、イアンが意見を曲げることはないだろうと判断した。彼はイアンに背を向け、格納庫を後にする。
ナドレは表向きの戦闘や武力介入で運用することを想定して作られた機体ではない。その役割はヴァーチェにある。
格納庫を辞したティエリアは、独りでに呟いた。
「だとしても、私は戦わねばならない……」
先の戦闘で、ガンダムマイスターを1人失った。ロックオン・ストラトス。右目を負傷した状態でガンダムに乗り込んだ彼は、大破したデュナメスと太陽炉を相棒のハロに預け、自身を宇宙の闇の中に散らせた。
彼の右目に眼帯をつけさせてしまったのは、ティエリアだった。国連軍との初戦闘で、ロックオンはティエリアを庇って敵MSの直撃コースを受けたのだ。
ティエリアの瞳に、静かな闘志がメラメラと湧き上がる。彼はまだ、諦めていなかった。しかし、自分1人だけがその意思を持っていても意味がないことも理解していた。
そのことを言葉と態度で教えてくれた、亡きガンダムマイスターを思い浮かべ、彼は行動を起こす。
ティエリアが訪れた相手ーーアレルヤ・ハプティズムは、あからさまな驚きの目を向けてきた。
「どうしたんだい。きみが他人の部屋を訪ねるなんて」
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