無抵抗タイム
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五河琴里が司令官を務める戦艦《フラクシナス》から地上へと戻った暁夜は、携帯を取り出して、同居人の折紙に連絡を取るために液晶画面をつけた。 それと同時に、顔が引き攣る。 というのも、いざ、液晶画面を付けれみれば、折紙からの電話が百件。 メールが二百件以上。一瞬、呪いのメールかと思って焦ってしまう。
「やれやれ、これは無抵抗タイム決定かな」
暁夜は苦笑を零して、折紙に電話をかける。数秒ほど、着信メロディが鳴り、やがて−−
『もしもし』
と、折紙の声が聞こえてくる。暁夜は一度軽く深呼吸をして、口を開く。
「折紙。 暁夜だけど、今から帰る」
『分かった。後でどこで何をしていたのか、問いただす』
「あぁ、了解だ。 じゃ、また後で」
『ええ、気をつけて。 暁夜』
その言葉を最後に電話は切れ、暁夜は液晶画面を消し、懐にしまい込む。 既に時刻は夕方も終わる頃で闇夜に星が瞬き出すだろう。家へと続く帰りの道を歩きながら、暁夜は、琴里から受け取ったインカムを手の平で弄びながら、大きく欠伸をする。
「・・・精霊を救う、ねぇ」
最後に握りしめた拳の親指の上にインカムを乗せ、上空に弾いた。クルクルと回って、重力によって落ちてくるインカムを再び掴み、
「−−馬鹿馬鹿しい」
そう不機嫌に答えて、ポケットに押し込む。 恐らく、否、必ず《ラタトスク》とDEMは敵対する。それは暁夜と士道もだ。大切な存在だとしても精霊を救うというのであれば、それより先に精霊を殺す。士道を精霊に近づけてはならない。かつてのあの末路に再び遭うのは、もう耐えられない。だから、遠ざける。 士道が彼女の事を何も覚えていないうちに。
「澪・・・お前だけは、絶対に士道に近づかせない」
胸ポケットから、写真を入れるネックレス(チェーン無し)を取り出し、カパッと開く。 そこには、一枚の集合写真が入っていた。
一人は暁夜。
その前に青髪に童顔の士道。
暁夜と士道によく似た雰囲気を持ち、後頭部で括った髪に利発そうな顔、左目の下の泣き黒子が特徴の少女。
その少女の後ろに、長い髪を風にたなびかせた端正な顔立ちながら、どこか物憂げで陰を帯びた表情の少女。
この写真は、暁夜達家族がまだ離れ離れになる前の、楽しかった最後の一日だ。
「そうえば−−真那は元気にしてるかなぁ」
写真に写る、後頭部で括った髪に利発そうな顔、左目の下の泣き黒子が特徴の少女の太陽のような笑顔を見て、暁夜は星が瞬く闇色の空を見て呟いた。
暁夜が目覚めた時、その場には士道も真那も彼女もいなかった。あの時、士道が彼女を連れてきた時に、断ればよかった。嫌われても恨まれてもいいから、彼女を家から追い出していればよかった。後悔
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