巻ノ百四十四 脱出その四
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「わかった、ではな」
「はい、これより」
「出よう、母上」
秀頼は傍らにいる茶々にも顔を向けて誘いをかけた。
「共に」
「いや、妾はここで死ぬ」
茶々は息子の申し出に首を横に振って応えた。
「もうよいのじゃ」
「ですが」
「妾がおると落城してします」
自分がいる城がというのだ。
「そうした運命なのじゃろう、だからな」
「それ故にですか」
「落城の運命はここで終わらせてじゃ。そなたは生きよ」
「それがしを生かす為に」
「そう思ってよい、とにかくじゃ」
「ここで、ですか」
「喉を突いてな」
そうしてというのだ。
「自害する」
「私めがお供をします」
大蔵局は茶々に寄り添う様にして秀頼に話した。
「ですから右大臣様はお気遣いなく」
「薩摩にというのか」
「先に国松様も向かっております故」
「そこで生きよというか」
「はい、そうして太閤様の血を残して下され」
「そうか、では」
「お急ぎ下さいます様」
こう言ってだ、大蔵局は秀頼を積極的に逃がした。そうしてだった。
秀頼は幸村達と共に茶々達に別れを告げるとそのうえで幸村の案内を受けて十勇士、大助と共に城を後にした。そのうえで。
秀頼が抜け道から出たのを見送ってからだ、茶々は大野や毛利、大蔵局達残った者達に対して厳かに告げた。
「これまでご苦労であった、ではな」
「これよりですな」
「妾は喉を刺してじゃ」
そうしてというのだ。
「自害する、そしてじゃな」
「はい、我等もまた」
「お供致します」
「冥土でも共にいましょう」
「大坂の者同士で」
「済まぬな、妾は悪い主であった」
落城にまで追いやってしまった、そうした主だったというのだ。
「実にな、しかしじゃ」
「それもこれで、ですか」
「終わりであり」
「そうしてですか」
「冥土では」
「もう落城もないであろう、それだけは嬉しいことじゃ」
最後に静かな笑みを浮かべてだった、茶々は用意された小柄を両手に持ち己の喉に突き刺した。そうしてだった。
大蔵局が涙を流しつつ介錯をしその大蔵局も他の女御衆もだった。
自害していき侍達もそうした、それから。
最後に残った大野と毛利は向かい合ってそれぞれ笑みを浮かべて最後に話をした。
「これまでよく働いてくれた」
「修理殿こそ」
「わしは何も出来なかったが」
「いえ、これまで戦えたのは修理殿のお力あってこそ」
「そう言ってくれるか」
「そのお働き冥土でも忘れませぬ」
「有り難き言葉、ではな」
大野は自らだった、腹を切り。
毛利も同時にそうした、二人が腹を切った傍らにいる秀忠に言った。
「これで終わりじゃ」
「父上、どうもです」
「茶々殿と修理、大蔵局に女御衆がじゃな」
「その様です
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