巻ノ百四十四 脱出その三
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「外に出るぞ」
「それでは」
こう話してだ、大助はすぐに十勇士達を呼び集めた。皆多少怪我をしているが五体満足であった。
十勇士達は幸村の前に控えて口々に言った。
「来られると信じておりました」
「ご気配確かに感じていました」
「そしていよいよですな」
「これより」
「右大臣様をお救いするぞ」
何としてもと決意していたそれを行うとだ、幸村は十勇士達に話した。
「よいな」
「はい、それでは」
「これよりです」
「我等最後の足止めを行い」
「右大臣様をお助けします」
「それはよい、わしが行う」
毛利がここで幸村達に言ってきた。
「わしと修理殿が最後まで戦う、そうしてじゃ」
「その間にですな」
「貴殿等は右大臣様を逃がしてくれ」
こう言うのだった。
「是非な」
「そうですか、それでは」
「真田殿、よく来られた」
まさにと言うのだった。
「生きておられて何より」
「分け身を使いそのうえで」
「分け身の首を取らせてか」
「暫し身を隠していました」
幸村は毛利にこのことを話した。
「昨日から」
「あの戦の後でか」
「もう落城は必至と見て密かに木下殿の陣に入り」
北政所の兄の家の軍勢にというのだ。
「そしてそこで、です」
「事情をお話されたか」
「既に北政所様からもお話がきていまして」
「それであったか」
「それがしも抜け穴を紹介して頂き」
「そのうえで」
「その抜け穴でここまで来ました」
こう毛利に話した。
「その様にしました」
「それでは」
「はい、これより」
「その抜け穴を使い」
「右大臣様をお助けします」
「わかり申した、ではその間は」
秀頼が逃げるそれまではというのだった。
「それがしと修理殿に任せられよ」
「かたじけない、それでは」
「そして抜け穴でござるが」
「我等が通りきりのいいところで」
「塞がれるな」
「抜け穴は見付かれば終わりでございまする」
敵、この場合は幕府の軍勢にだ。
「ですから」
「そちらも頼み申す」
「ではこれより」
「はい、右大臣様のところに」
「参上します」
こう言ってだ、幸村は秀頼の前に参上しことの次第を述べた。そのうえで秀頼に対して強く言うのだった。
「ではこれより」
「薩摩にか」
「お逃げ下さいませ」
「そうか、腹を切るつもりであったが」
「右大臣様の天命はまだ尽きてはおりませぬ」
「だからか」
「ここはすぐに」
「お主も他の者もそう思っておる様じゃな」
秀頼はここで残っている者達を見た、見れば皆目で秀頼に言っていた。秀頼もそれを見て頷いて述べた。
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