純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 2
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
執務用の机と椅子と緑色が鮮やかな観葉植物。窓を背負った執務椅子に座って正面には、応接用のガラス製ローテーブルを挟む黒革のソファが二脚。その奥に役員が往来するであろう廊下へと繋がる一枚扉が在り、両脇で吊られた花籠と床置き型の燭台が入室者を歓迎する。
次期大司教の執務室と反対側に位置する壁の中央には寝室への扉が在り、開いて左手側にそこそこ大きなベッド、水差しとコップが置かれた真っ白なサイドテーブル、クローゼット等を配置。正面に浴室への扉。右手側に何枚かの壁型間仕切りが連なり、一人分の幅しかない隙間を通り抜けた先で、食器棚や作業台や水瓶等が丁寧に並べられていた。
……御令嬢の寝室と言えば、間仕切りは大体ベッドかクローゼットの傍に設置するものだと思うのだが。何故、食器棚のほうを隠しているのだろうか。ちょっと不思議な絵面だな。
と。
何の気無しに伸ばした手の先で、見覚えある「何か」が壁に掛かっている燭台の灯りを受けてキラリと光った。
見間違いか? と、瞬きしても目蓋を擦ってから見直してみても、「何か」は変わらず其処に居る。
「………………くらげ」
くらげだ。
師範の教会でクローゼットに隠れていた、「あの」くらげ。
本体と思われる半円部分の中央付近に付いた二つの点。下部から伸びる四本の棒。
今度は全体が真っ白な陶器で、玉付きの頭頂部周辺が部分的に取り外し可能。四本の内三本が下から上へ曲線を描いて自身の頭を撫でるように先端だけがくっ付き、残り一本は同じように下から上へ伸びつつも、穴が空いた先端が外側に向いている。
うん。これはポットだ。お茶を淹れる為のポット。食器棚に収納されてる事から考えても、その使い道に誤りは無い、筈。
しかし、これはどうしたことだろう。
我が国アルスエルナは東と南が海に囲まれているとはいえ、領土の広さは中央大陸で一・二を争う。当然、陸地のほうが広面積だし、内陸部で生活する人間が海洋生物に親しみを持つ機会はそんなに多くない。都民や北方領民に至っては、余程の興味が無い限り「くらげ? 聴いたことがあるような、無いような?」程度の認識じゃなかろうか。
私自身も、学徒時代に海軍下で訓練してたから知ってる、くらいだし。
なのに、何故か北と都で全く同じ造形のくらげが鎮座している。
はて?
「あーっとぉ! すみません、フィレスさん! 言い忘れてましたが、お茶を淹れる際には縦長のポットを使ってください! 丸っこいほうは私個人で使っている物なので!」
首を捻ったところで、なにやら慌てた様子のミートリッテさんが駆け込んで来た。
くらげのポットの横に並ぶ至って普通な造りのポットを取り出し、作業台の上に置いてくれる。
「……このくらげは、王都で流行しているのですか?」
「え?」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ