第一章『焔の中の約束』
episode1『鬼は焔の中に産声を上げる』
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ながらそう言って、教会内に繋がる扉へと戻る。マナがパタパタとその後に続いて、シンの服の裾を遠慮がちにちょこんと握った。
「今日はシスター用事あるらしくって、昼までは帰ってこないんだ。悪いんだけど、朝ごはんの用意を手伝ってくれるかな」
「うん、分かった。皆はまだ起こさないでも良いの?」
「大丈夫、今起こしても皆眠いだろうしね」
スリッパを脱いで棚に戻し、マナの分も一緒に仕舞う。少し長い廊下を歩いて食堂に向かえば何やら良い匂いが漂ってくるので、キッチンの裏を覗き込むと、IH調理器の上に大きな鍋がいくつか置かれていた。
横には書き置きがあったので目を通すと、どうやらシスターが既に朝ごはんの用意は済ませてくれていたらしい。味噌汁の良い匂いが、自然と空腹感を強めてくる。炊飯器も既に保温状態に移行しており、ご飯は炊きたてのようだった。
「マナ、食器をお願いしても良いかな。俺はご飯を混ぜておくから」
「分かった、いつもので良い?」
「あぁ、一気に持ってこなくて良いからね」
奥の部屋の食器棚へ向かっていくマナを見届けてから、カパッと炊飯器の蓋を開く。人数が人数故に少々一般のものよりも大きな炊飯器だが、もう何度もやっているせいでこの程度ならどうという事はない。
もうもうと立ち込める湯気も気にせずにしゃもじをご飯の端に差し込んで、ぐるりと周囲を一周させる。下の方から切るように混ぜて、端に残った米粒は可能な限り削ぎ落とした。
ふぅ、と一息ついて額をぬぐい、一先ずはこれで良しと蓋を閉じる。水を溜めたカップにしゃもじを戻してぐるりと肩を回せば、ふと調理台に置かれている手鏡が目に入った。
「……っ」
そこに映っていたものを見て、シンは小さく顔を歪める。なんということはない、ずっと前から何度も見てきたものだ。今更どうこう言ってどうにかなる話ではないとも分かっている。だが、それでも気にせずにはいられなかった。
「シン兄、食器持ってきたよー……シン兄?」
「……ん、あぁ、ありがとうマナ。助かった」
取り繕うように笑顔を浮かべて、彼女の持ってきてくれた数種の食器を受け取る。その内人数分重ねたお椀を持って鍋の近くまで行き、味噌汁を注ごうとしたところで、シンはふと気になってマナに問いかけた。
「なぁマナ。僕のここ、何か付いてないかな」
そう言って彼が指したのは、己の額だった。少し長めの前髪を掻き上げて、自分のおでこがよく見えるようにする。だがマナはその質問の意味がよく分からなかったようで、こてんと首を傾げた。
「何にも着いてないよ?」
「……そっか。ありがとう、分かったよ」
そうして笑顔を浮かべ、一先ず自身の分とマナの分だけ朝食の用意を進める。考えないように、目を
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