暁 〜小説投稿サイト〜
ユア・ブラッド・マイン―鬼と煉獄のカタストロフ―
第一章『焔の中の約束』
episode1『鬼は焔の中に産声を上げる』
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ーが差し出してきたタオルを受け取って礼を言い、それで顔を拭えば、ポンと頭に手を置かれる感触があった。

「そういう訳だ、シン。昼頃には帰ってくると思うが、他の子達の事を頼むぞ。最年長はお前なんだからな」

「……ん、ぐ……!シスター、痛い痛い」

「おぉ、悪いな」

 ケラケラと笑って手を離す彼女に少々不満を抱きながらも、手に持ったタオルを井戸横のタオル掛けに戻す。視線を戻せばシスターは既に肩に大きめの鞄を下げており、出発準備は終えられているようだった。

「……行ってらっしゃい、気を付けて。シスター」

「うん、行ってくる。ありがとう、シン」

 そう言って庭の裏門から外へ向かうシスターに手を振れば、彼女もまた答えて手を振り返してくる。姿が木々に隠れて見えなくなった辺りで、何やら背後から視線の様なものを向けられている事に気が付いた。
 気になって振り返ってみれば、ついさっきシンが出て来た扉からこちらを除く小さな人影を見つける。隠れる必要もないというのに引っ込んでいるその仕草から簡単に誰なのかが予想出来て、苦笑しつつシンはその人物へと呼び掛けた。

「マナ、もうシスターは出たよ。おいで」

「……ほんとに?もう居ない?」

 そう不安そうに顔を出して来たのは、シンの一つ歳下にあたる少女だった。
 夏目(なつめ)真奈(まな)。シンがこの児童養護施設にやってきた丁度一ヶ月ほど後に家族となった子であり、運悪くもシスターがお怒り心頭の現場に直撃してしまった子でもある。無論、彼女が何かをやったという訳でもなく、他の子達の内数名が怒られてしまっていたというだけなのだが、幼い彼女にとっては大変ショッキングだったらしい。

 今でもこの通りちょっとしたトラウマとなっているようで、シスターに「私はマナに怖がられてしまっているのか……?」と相談される事もしばしばあった程だ。マナがシスターと対面する時は大概の場合、シンも連れ出されるのがお決まりのパターンとなっている。

 パタパタとスリッパを鳴らして駆け寄ってくるマナに「おはよう」と声を掛けて、井戸の前の洗面所の場所を譲る。マナもまた挨拶を返して桶から手で水を掬い、ぱしゃりと顔に掛けて顔を洗い始めた。

「マナも今日は早いね、どうしたの?」

「……んむ。さっき起きたらね?シン兄が居なかったから、びっくりして」

「っとと、ほら、先に顔拭いて」

 びしょ濡れの顔のまま話しだそうとするマナに、慌ててタオルを引っ張り出して顔を包んでやる。痛くない程度に優しく顔を拭ってから少し乱れてしまった髪を軽く整えて、服の襟を正した。

「……ん、ありがとシン兄」

「はい、どういたしまして。僕はちょっと変な夢見ちゃっただけだから、大丈夫だよ」

 タオルを戻し
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