第一章『焔の中の約束』
episode1『鬼は焔の中に産声を上げる』
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鳴り響いている。銀の防火服を纏った大人達が瓦礫を押し退けて、家に踏み入ってくるのが見えた。
死ぬ事は許されない、この罰を背負い続けろと、運命はそう言うのだ。
せめてこの炎の中で、あの憎い二人を焼き尽くしてくれたこの炎の中で死ねたのなら、どれ程気楽な事だっただろうか。けれど炎は、人を殺した大罪の鬼を殺す事など出来なかった。
あぁ、それは、なんとも。
「……酷い話、だなぁ」
――逢魔シンは、自らが血濡れた鬼に見える。
◇ ◇ ◇
「――っ、ぁ」
最悪の目覚めだった。
荒い呼吸のままに目を見開いて、その天井がよく知る教会の一室のソレである事に一先ずは安堵を覚える。今のビジョンが夢であった事に安堵して、額に浮いていた汗を片手で拭った。
枕元の時計に表示されている時間は午前五時過ぎ、起きるには少々早めだが、神父様やシスターはもう起きているだろう。別に起きてしまっても特に不利益はない。
上半身を起こせば、天井まで頭スレスレだ。天井もそう高くはない上に二段ベットなのだから仕方ない事なのだが、そろそろ寝場所の移動をシスターに申し出ておかないとな、などと考えつつ、ベッド端の柵から身を乗り出して、木製の梯子に足を掛ける。
義兄妹達はまだぐっすりと眠っているようで、彼ら彼女らを起こしてしまわないよう、慎重に寝室を後にした。
窓から朝日の差し込む廊下を渡って、中庭に繋がる扉を開ける。いくらか横の棚に仕舞われているスリッパの内の一つを履いて、庭の端にある井戸へと向かった。
「……?あぁ、シン。おはよう、今日は早いんだな」
「おはようシスター、変な夢見ちゃってさ。今から寝直すには微妙な時間だし、起きちゃおうかなって」
先に居た若干男口調っぽいシスター――本名を有馬智代というらしい――は、神父様の代わりにこの教会で児童養護施設の主として暮らす、シン達にとっては母親の様な存在だ。
元々は格闘技をやっていたらしく腕っ節がめっぽう強いし、怒るとそれはそれは恐ろしいので、シンと同じくここに暮らす子供達は彼女に誰一人逆らえない。一応立場的には彼女より上の筈の神父様の方がまだ怖くない。
「それより、シスターもどうしたの?この時間はまだ朝のお勤めじゃなかったっけ」
「早めに起きて終わらせたんだ、今日は少し出かける用事があるからな」
「ふーん……」
何かあっただろうか、と昨日見たカレンダーの記憶を掘り返してみるも、特に何かがあった覚えはない。急用か何かなのだろうか、などとぼんやり考えながら桶に貯められた水で顔を洗った。
シスタ
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