金色の秋
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場だから名前こそ教えてはくれなかったけれど。太陽みたいだなと思って、私は彼を「金色」と呼ぶことにした。それはあの明るい太陽の色だ。私が彼をそう呼ぶと、彼は私の銀色の髪を綺麗だと言って、私を「銀色」と呼ぶようになった。
何の希望も無い戦場で、一兵士として働くしかない私たちだけれど。共に戦い、守り合ううち。いつしか互いの心には、友情ではない何かが芽生え始めていたんだ――。
◆
でも秋は来るんだ、人を死へといざなう秋は。
やがて秋が深まって、私たちの絆も深まった頃。
冬へ導く死神が、続く未来を断ち切った。
今日も変わらぬ戦場で、私とあいつは剣を振る。あいつははじめの頃は剣がへたくそだったが、私が教えていくうちにめきめきと上達した。筋がある。彼はいずれいい剣士になるだろう。
今日も変わらぬ戦場で。背中合わせに立って、迫りくる敵軍兵士を撃退する。私は人形、氷の冬将軍。誰を殺しても罪悪感など浮かばないさ。
私は信じていた。あいつと二人、この戦いを絶対に乗り越えられるって。
あいつの陽気さにはそう信じたくなるような何かがあったし、あいつ自体決して弱くはなかった。
「さァッ!」
気合いを発して向けられた剣を受け流す。隙ができた相手の胸。私は大きく一歩踏み出して、剣をがら空きの胴に突き込んだ。
くずおれる身体。私は相手の胸を蹴って剣を抜き、そのまま次の相手へと向け――
「――危ないッ!」
――る暇は、なかった。
見れば。あいつが胸から血を流して地面に崩れ落ちていた。
その前に立つ敵軍兵士。剣の軌道は私を狙っていた。
あいつの言葉、剣の軌道。
私は知った。
「……お前が、守ってくれたのか」
そうさ、初めて出会ったあの日のように!
瞬間、私の中で獣が咆哮を上げた。
「――貴様ァッ!」
何も考えられなかった。私は何の掛け値も無しに怒っていた。本気の本気で怒っていた。激怒していた。
目を横に向ければ。背中預けて戦っていたあいつは血の海に倒れていて。
眩暈(めまい)がする。私の目の奥が赤く染まる。
「滅べェ……滅べ滅べ滅べェエッ!」
襲ってきた衝動に任せ、私はひたすらに剣を振った。私の目には敵軍兵士の赤い鎧しか見えていなかった。隣でまた倒れゆく自軍兵士も、地面に転がったあいつさえ。
――私の眼には、映ってはいなかった。
「全部――消え去れェッ!」
叫び振った剣は誰かを守るためにあらず、誰かを殺すための殺人剣。あいつの好きな「守る剣」ではなくて、ただ純粋な怒りと悲しみからなる、自らが傷つくことさえ厭わない「殺す剣」!
殺して殺して殺して殺して殺し尽くして疲れ切った私は、荒い息を繰り返しながらも大地に寝転がった。
隣に横たわるはあいつの
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