暁 〜小説投稿サイト〜
気まぐれ短編集
金色の秋 
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
場だから名前こそ教えてはくれなかったけれど。太陽みたいだなと思って、私は彼を「金色」と呼ぶことにした。それはあの明るい太陽の色だ。私が彼をそう呼ぶと、彼は私の銀色の髪を綺麗だと言って、私を「銀色」と呼ぶようになった。
 何の希望も無い戦場で、一兵士として働くしかない私たちだけれど。共に戦い、守り合ううち。いつしか互いの心には、友情ではない何かが芽生え始めていたんだ――。

  ◆

  でも秋は来るんだ、人を死へといざなう秋は。
  やがて秋が深まって、私たちの絆も深まった頃。
  冬へ導く死神が、続く未来を断ち切った。


 今日も変わらぬ戦場で、私とあいつは剣を振る。あいつははじめの頃は剣がへたくそだったが、私が教えていくうちにめきめきと上達した。筋がある。彼はいずれいい剣士になるだろう。
 今日も変わらぬ戦場で。背中合わせに立って、迫りくる敵軍兵士を撃退する。私は人形、氷の冬将軍。誰を殺しても罪悪感など浮かばないさ。
 私は信じていた。あいつと二人、この戦いを絶対に乗り越えられるって。
 あいつの陽気さにはそう信じたくなるような何かがあったし、あいつ自体決して弱くはなかった。
「さァッ!」
 気合いを発して向けられた剣を受け流す。隙ができた相手の胸。私は大きく一歩踏み出して、剣をがら空きの胴に突き込んだ。
 くずおれる身体。私は相手の胸を蹴って剣を抜き、そのまま次の相手へと向け――

「――危ないッ!」

――る暇は、なかった。
 見れば。あいつが胸から血を流して地面に崩れ落ちていた。
 その前に立つ敵軍兵士。剣の軌道は私を狙っていた。
 あいつの言葉、剣の軌道。
 私は知った。

「……お前が、守ってくれたのか」

 そうさ、初めて出会ったあの日のように!
 瞬間、私の中で獣が咆哮を上げた。
「――貴様ァッ!」
 何も考えられなかった。私は何の掛け値も無しに怒っていた。本気の本気で怒っていた。激怒していた。
 目を横に向ければ。背中預けて戦っていたあいつは血の海に倒れていて。
 眩暈(めまい)がする。私の目の奥が赤く染まる。
「滅べェ……滅べ滅べ滅べェエッ!」
 襲ってきた衝動に任せ、私はひたすらに剣を振った。私の目には敵軍兵士の赤い鎧しか見えていなかった。隣でまた倒れゆく自軍兵士も、地面に転がったあいつさえ。

――私の眼には、映ってはいなかった。
「全部――消え去れェッ!」
 叫び振った剣は誰かを守るためにあらず、誰かを殺すための殺人剣。あいつの好きな「守る剣」ではなくて、ただ純粋な怒りと悲しみからなる、自らが傷つくことさえ厭わない「殺す剣」!
 殺して殺して殺して殺して殺し尽くして疲れ切った私は、荒い息を繰り返しながらも大地に寝転がった。
 隣に横たわるはあいつの
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ