金色の秋
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確か木枯らしと言ったか。
秋は終焉の季節だと言うが、私はここで散るつもりはない。
私は血を払い、再び剣を構えた。私に向かってくる敵が一名。
――大丈夫、斬り殺す。
冷たい決意とともに、私はその兵士を睨んだ――
瞬間。
秋の戦場を一陣の風が吹き抜けて、舞いあがった砂埃が私の目に入って視界を奪った。反射的に瞬きをする。私の視界が一瞬だけ消えた。
まずい、この状況では!
――殺される!
目前に迫った剣の反射光。避けようにも時間がなくて。
……運命か。私も人をたくさん殺した。
目だけは閉じるまい。そう思って相手を睨んだ。
私はそうして死ぬ……はずだったのに。
「こんなのおかしいだろ!」
銀色に輝いた剣が、私のものでも相手のものでもない剣が私の視界に映って。カキーン! はね飛ばされたのは相手の剣。目の前に立つは私と歳の近そうな兵士。
私は彼に守られたのだと理解した。
「お前――ッ!」
「生憎だけど。俺は死にそうな誰かを見捨てるほど薄情にはなれないんだ」
憎らしいほど格好良く笑って、彼は倒れた私に手を貸した。
私は仏頂面で答えた。
「そんな甘ったれた思考では、いずれ死ぬぞ貴様」
「死んでもいいさ、誰かを守りきれるのならな!」
そのあまりにも場違いで陽気な態度に、私は溜め息を返すことしかできなかった。
私はそんな彼をどこか眩しく思いつつも、いつもの調子で冷たく言った。
「自殺志願ならば別に止めない」
そう言われても、馬鹿みたいな理論を笑顔で彼は口にする。
「生きたいけど、死にそうな人優先さ」
「馬鹿ってよく言われないか?」
「馬鹿でも別にいいんじゃないの?」
「…………」
どうしてだろう。その日、私は彼を見ていられなくなって。気が付いたら訊いていたんだ。
「どこ所属だ。良かったらついていってやる」
「おおぅ? 麗しきレディにそんなこと言われるなんて嬉し……」
「所・属・を・言・え」
「ハイハイ、十七番連隊ですよー。そっちは?」
「十七番連隊。フン、同じか。ならば好都合」
「何が好都合だって?」
その時私は、私を助けてくれた彼に対して抱くこの感情が何か、知らなかった。
だから素っ気なく答えた。
「自殺志願が、見ていられるか。だからついて来い。私は実力には自信がある。お前が誰かを守って死なないように、私なら何とかしてやれるさ」
殺してきた人間の数はもう両の手ではおさまらない。それだけ経験豊富だという自覚はあるんだ。
彼はその答えを聞いて、笑って言った。
「そりゃあいい。じゃ、俺に守られないように頑張ってくれよ」
「当然だろう?」
かくして私と彼は出会い、行動を共にするようになった。
明るく陽気で優しい彼。戦
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