金色の秋
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秋、それは終わりの季節。あらゆるものが冬という終焉に向かい、死へと駆け出していく季節。黄昏の季節。
私は、秋が嫌いだ。
秋は終焉、死への旅路。あらゆる命が潰えていく季節。
命というものは終わる瞬間に何よりも美しく輝くというけれど。
でも――終わったら、意味ないじゃないか。
私のあだ名は「冬将軍」。冬の恐ろしい寒さのように、血も涙も無い人間だと人は言う。
しかしあの日、あいつは私の心に確かな光を灯してくれた。
その瞬間、私の冬は終わったのに。私は温かくなれたのに、どうして。
――お前は、死んでしまったのだろう。
ああ、また秋が来る。私の嫌いな、秋が。
そしてそのたびに私は、お前と出会ったあの秋を思い出すのだろう。
◆
「全軍、進めッ!」
鳴らされた喇叭(らっぱ)、始まった戦争。
ああ、ついに始まってしまったのか。私は支給されたちゃちな剣を構えて戦場を睨(ね)めつけた。
戦わなければならなかった。そうさ、私みたいな兵士がいくら叫んだって何も変わらない、何も変えられないんだ。地元で少し有名な程度の兵士には、何の権限もないのさ。戦はお偉いたちが兵士を駒のようにして使い捨てて行うゲームだ、命の遊戯だ。所詮、私たち兵士は使い捨ての駒に過ぎない。駒がいくら足掻いたって叫んだってこの運命は変わらない。この境遇は変わらないんだ、だから。
だから私は心を閉ざした。誰を殺しても傷つかないように。
人は私を冷酷と言うが――弱い私は、こうでもしなければ生きていけなかったから。
「はぁっ!」
切り裂く感触。私の剣は、怯えた顔をした少年兵の首を一撃で刈る。
その瞳には涙があった。その口は両親を呼んでいた。
――だがな、そんなの。私の知ったことじゃないんだ。
戦場に情けを持ち込むな。その瞬間殺される。戦死した兄がそんなことを言っていた。だから私は戦うんだ。相手がどんなに幼かろうと、いくら悲しみ泣いていようと。
生き延びなければならなかった。私が死んだら、家族は小さな妹と年老いた両親だけになる。それだけは避けたい。そんなになっては生きていけない。
――だから私は、戦うんだ。
「よう、『冬将軍』! 相変わらずの冷酷ぶりで!」
声に振り向いたら同僚がいた。彼は私に親しげに声を掛けてきた。
だがな、戦場で誰かに軽口を叩くとはそれは油断。油断は死へとつながるんだ。
「あんたさぁ、少年兵くらい見逃さ……」
笑う同僚。しかしその首は敵軍兵士に刈り取られた。
だから話しかけるなと言ったのに。
あいつは明るく優しくて。そして馬鹿だったんだ。
そんな同僚の死にさえ涙を流せない私は。やはり冷酷と言うのに相応しいのだろうか。
風が吹く。少し肌寒い季節だ。この風を
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