241部分:第十七話 姿の見えない嫉妬その十四
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第十七話 姿の見えない嫉妬その十四
「たっぷりとね」
「うん、それじゃあね」
赤瀬もにこりと笑ってだ。椎名のその言葉を受けた。
そのうえでだ。月美も陽太郎に自分が持って来た重箱を差し出すのだった。
「あの、これを」
「俺に?」
「はい、食べてくれますか?」
差し出しながらの言葉だった。
「よかったら」
「是非頂くよ」
陽太郎はにこりと笑って月美のその申し出を受けた。
「月美が作ってくれたんだよな」
「はい」
赤くなった顔で陽太郎に答える、やや俯いていてその赤も椎名の赤より赤かった。
「そうです」
「じゃあ是非。全部貰うよ」
「有り難うございます」
「御礼なんかいいよ。むしろさ」
「むしろ?」
「御礼を言うのは俺の方だよ」
まだ俯いて赤い顔の月美だ。微笑んで言うのだった。
「だって。こんなに作ってくれたんだからさ」
「それでなんですか」
「本当に有り難うな」
実際に礼を言う陽太郎だった。
「じゃあ食べさせてもらうよ」
「はい」
そしてだ。ここで椎名の予想通りの事態が起こった。
狭山がだ。陽太郎の横からスケベそうな顔で言うのだった。
「なあ、いいか?」
「何がだよ」
「俺にも一つくれないか?」
にへらとした笑みで陽太郎が開けた重箱を覗きながら言う。そこにはお握りやトンカツ、それに野菜の酢のものや明太子等があった。
「凄く美味そうだしな」
「駄目」
「駄目に決まってるじゃない」
ここですぐに椎名と津島が言ってきた。
「それはね」
「あんたのお弁当じゃないじゃない」
「げっ、駄目なのか」
言われた狭山はびくりとした態度になって返した。
「そうなのかよ」
「あんたにはあんたのお弁当があるから」
「はい、これ」
津島がここでパンを出してきた。
「これ食べなさい」
「御前の家の店のか」
「そうよ、パンもやってるじゃない」
「そういえばそっか」
「パンとケーキは元は同じものだからね」
だからだというのである。津島は完全にパン屋の娘の顔になっている。
「食べなさいよ。わざわざ持って来たのよ」
「俺の為にか?」
「そう、あんたの為」
まさにその通りだというのである。
「そういうことだからね」
「そうか。じゃあ悪いな」
狭山も彼女の言葉に頷くのだった。それでそのパンを手に取った。
それは一つだけではなかった。まずは食パンが一斤だった。
それから大きなコッペパンが出て来た。それは。
「ロシアパンよ」
「ロシアパンってあのスーパーとかで売ってるか」
「そ、そのパンよ」
まさにそれだというのである。
「これもあるから」
「何か凄い量だよな」
「あんたもう自分のお弁当持ってるし」
見ればだ。彼の膝の上に
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